第11章 11.
おまけしてもらった紐は、キラキラとした白の組紐だった。
「どちらも侑士の髪に映えそう」
2つとも彼に渡そう、と大事に鞄にしまい、荷物を預けた店へと戻る。
店先に人だかりができていた。
「白馬だとよ」
「旅人かい?」
「人探しだそうだよ」
「ちらっと見たけど、なかなかのハンサムだったねぇ」
「顔をちゃんと見せてくれないかしら」
旅一座でも来たのだろうか、と人集りを掻い潜って端から店に入ろうとした。
「だからっ医者っだよっ女の人の医者なん、だっ!
ここにいつも荷物を預けるて、葵はんがっ!」
その口調と大きくなった声に、足を止めた。
「...侑士?」
バッ!と振り返った、ローブのフードを深く被る人。
せんせっ!と動いた口元に、侑士!と駆け寄った。
覗き込んだフードの下の侑士は、紫陽先生、とようやく見つけた彼女に縋った。
「あなたっなんで!?一人っ?
どうして...」
「先生、はよ帰ってきて!
リツのオカンが変やねんっ!」
「リナさんが?」
「腹痛いて苦しんどって、葵はんは、陣痛やっていうんやけど、赤ちゃん、全然出てこぉへんねんっ
血がドバッて出とって、赤ちゃん産ます人もおらへんくてっ血ぃ出るばっかりでっ」
「わかった、わかったわ。落ち着いて」
侑士の目を見つめて深呼吸を促す。
「上手よ。うまくなったわね」
「はぁ」
少し気迫が落ち着いた表情に、安堵する。
「あなた、どうやってここを?」
「シルキッサに『紫陽先生んとこ連れてってくれ』って言ったら、なんもせんと俺、乗せてここまで走ってくれてん」
よくやったわ、とシルキッサを撫で、荷物を纏めながら状況を聞く。
「血が出たのは何時ごろかわかる?」
「はっきりわからへん...
リツが来たんが、先生が出かけてからおやつ出るまでの間やった。葵はんとリツん家行ったら、ゼーゼーしてはった」
わかった、と頷くと、荷を預けている店主のもとに走る。
「あとで荷運び馬で届けさせる」
早く行きな、と言われ、シルキッサに跨り、侑士を後ろに乗せた。
「落ちないでね、シルキッサは乱暴だから」
「知っとるよ」
「ここまで一人で乗ってきたんだものね」
掴まって、と言うと、ギュッと抱きついた侑士の手をひと撫でし、走ってシルキッサ!と侑士が握り締めていた手綱を引いた。
✜