第11章 11.
鞍を掛けたシルキッサに跨るも、侑士は困惑した。
「隣町て、どうやって行くんや...」
せいぜい屋敷のある山と最寄りの市場くらいにしか行ったことが無い侑士。
シルキッサに跨ったまま、どないしょう、と悩んでいると、手に持った手綱を引かれた。
口に手綱の弛みを銜えたシルキッサが、再度、手綱を口で引っ張ると、それを離して前を見た。
「え?もしかして、わかるん?
紫陽先生がおるところ...?」
前脚の蹄を鳴らしたシルキッサ。
「っ頼んだでっシルキッサ!
振り落とされんよう、頑張るわっ」
ギュッ、と侑士が手綱を握り込んだのを確かめたシルキッサは、いつものように嘶きをあげて、力強く道を蹴った。
(っむっちゃ風強いっ)
駆け抜ける景色に、無意識に姿勢を低くする侑士。
侑士が振り落とされないよう、悪路も足場を選びながら、シルキッサは森の中へと駆け込んで行った。
取り囲む木の種類が変わると、シルキッサは方角を変えて駆け続ける。
少しすると、侑士が暮らす街と似たような景色に変わり、シルキッサは辺りを気にするようになった。
「先生、近くにおるん?」
キョロキョロとするシルキッサと周囲を見回していると、昼時の市場を埋め尽くす人の波に出くわした。
危なそうだ、と降りたシルキッサの手綱を手に、店が並ぶ通りを歩き出す。
「せんせー、どこやろ...?」
時折、一瞬目が合う人もいて、ドキッとして目を逸らすが、相手はそんな事をこれっぽっちに気にしていない様子で通り過ぎていく。
通りの少し先に、『薬』という旗を見つけ、行ってみよ、とシルキッサに声をかけた。
「こ、こんにちはぁ」
ガラ、と木の引き戸を開けると、紫陽の診察室のような匂いがした。
奥に座っていた年老いた女性が、なんだい?と顔を上げた。
「っあの、紫陽先生...一先生、来てませんか...?」
「紫陽なら、さっき出て行ったよ。
確か、あっちに向かって行った」
向こう、と指さす彼女に、ありがとうございました、と頭を下げ、シルキッサの手綱を引いた。
「見つかるかなぁ。
ちと急ごう、シルキッサ」
タカッタカッと蹄を鳴らすシルキッサと街の中央に向かって歩き出した。
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