第10章 10.
「シルキッサー」
体調が落ち着いた侑士は、野菜を持って森に向かった。
「シルキッサー!」
ガサッ、という音に振り替えると、木影からこちらを窺い見る白馬の顔。
「シルキッサ、俺や。忘れてもうたん?」
野菜あんで、と籠を見せると、パカパカと近づいて、侑士の直ぐ側でフー、フー、と鼻を鳴らした。
「堪忍な。迷惑かけたな」
じっと見つめる大きなシルキッサの瞳。
「俺か?
もう平気やで。
せやけど、やっぱ俺は弱虫なんやなぁ」
はは、と笑う侑士に、シルキッサは広い額をグイグイと押し付ける。
「慰めてくれるん?おおきにな。」
お前、優しいなぁ、と顔を撫でてやると、シルキッサの銀糸の様な尾の毛が揺れた。
おやつをやりながらブラッシングしてやると、シルキッサは少し遠くを見て、侑士の手を食んだ。
少し先に行くと、振り返って大きな目で侑士を見つめる。
「来いて言うとんの?」
ブルル、と鳴いたシルキッサに近づくと、木々を潜りながら奥へと進む。
「あんま奥行ったら、俺、戻りきらんで」
時々、頭に引っかかる木の枝を払い除けながら、森の奥に進む。
「っなんや?」
妙に眩しい光に目を細めて手を翳す。
カパ、と鳴ったシルキッサの蹄に、ゆっくりと顔を上げた。
鬱蒼とした森の木々は、風に揺れている。
ちょうど真上から射す陽によって作られた陰が、葉擦れの音とともに揺れて煌めいた。
差し込む日差しのもとに降り立ったシルキッサは、来い、とばかりに陽だまりの中を小走りにかけて、侑士を見ている。
「めっちゃあったかいなぁ」
陽だまりの中に立った侑士は、うちの畑のようだ、と柔らかく包み込む光に、んー!と背を伸ばす。
岩の元にしゃがみ込んだシルキッサは、前脚に頭を預けて目を閉じた。しばらくそのままでいると、ごろりと脚を投げ出して、腹とあごを地面にぺたりとつけた。
長いまつげの目で見上げるシルキッサの長い脚の間に座り込む。
「むっちゃええとこ知っとるな。
シルキッサの秘密基地なん?」
首から腹をブラッシングしてやると、気持ちよさそうに目を閉じた。
「よかったん?俺に教えてしもて」
目を閉じたまま、フサフサとした尾先を揺らしたシルキッサ。
おおきになぁ、と艷やかな毛並みを撫でながら、時折聞こえる小鳥の鳴き声に陽だまりの空を見上げた。
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