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意志あるところに道は開ける

第10章 10.



 ✜

頭につく葉っぱを払いながら、二人の男が出てきた。

「馬は?馬はどこに行った?」

一人の男が、侑士とシルキッサに気がついた。

「あー、兄ちゃん。
 その馬、あんたの馬かい?」

鼻息を荒げて前に出ようとしたシルキッサの首に抱きつき、落ち着きや、と震える手で撫でる。

「う、うちの子や...」

大丈夫、大丈夫、と言い聞かせながら、ずり、と後ずさる。

「飼ってんのかい?」
「ちゃう。ともだちや」
「友達、だぁ?」

ゲラゲラと笑うもう一人の男。

その笑い声に、あの薄暗い牢屋を思い出し、侑士の背中に冷たい雫がいくつも流れた。

「っハッ、ハッ」
「なあ、兄ちゃん。
 『おともだち』だってんなら、一緒に来ないかい?
 いいところがあるんだ」
「...『いいところ』?」
「ああ!
 こいつの友達の馬やほかの動物もたーくさんいるぜ?
 兄ちゃん、動物好きなんだろ?仲良くしてやってくれよ」

寄り添っていたシルキッサが、後ろ足の蹄を鳴らして、大きく鳴いた。

「だーいじょうぶっ!
 悪いようにはしないっ!」

ほらおいで!と差し出された手に、嫌や、と首を横に振る。

「い、行かへんっ」

ギュッ、とシルキッサにしがみつく侑士を見ると、はーん、と男は目を細めた。

「その口調、『西』の生まれか?」
「...ちゃっち、ちがう」
「『西』の男は高く売れんだよなぁ。
 特にお前みたいなキレーな顔のやつは、大人気だぜぇ?」
「違うっ!俺はっここで生まれた、ん、だっ」
「かーわいいねえ!必死こいて訛隠してぇ
 悪いようにはしねえって言ったろ?
 なに、キレーなオネーサンと気持ちいーことするだけさ」
「悪趣味のジジィかも知れねぇけどなっ」
「余計なこと言うんじゃねぇ」

どつかれた男は、痛っ!と笑って、侑士を見た。

「っ!」

その瞳に、ゾゾッ、と背中が粟立つ。


  もっといい声で啼けねぇのかっ


「っあ」

ブルブルと震える侑士のつなぎを食んだシルキッサが、ぶんと頭を振って侑士を押し倒すのと、乾いた銃声が聞こえたのはほぼ同時だった。

「ぐあっ!」
「兄貴っ!?」

倒れ込んだ男は、いてぇ!と足を抱え込む。

「お引き取りください。今すぐに」

銃口から煙を立てるリボルバーのハンマーをかちり、と鳴らしたのは、燕尾服姿の葵だった。

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