第9章 9.
うーん?と紙を見比べていた侑士は、顔を上げて困ったように笑った。
「ほんで、俺はどっちなん?」
「侑士が書いたのが『自認』、私が書いたのが『他認』。
『他認』はそうそう確認することができないから、『自認』で決めてもいいし、『他認』で、全てではなくても半分以上は自分と同じ意見なら『合意』とか、『自身のなかでの基準で』決めていいの。
つまり、これができたら大人、これができないなら子ども、という共通した、すべての人が納得する基準って無いのよ。
だけど、侑士。
あなたの性格の場合、いきなりそれだけ伝えてたって納得しないでしょう?」
どう?と聞く紫陽に、何もかもを見透かされたような気がして、むず痒い体を揺する侑士。
「『自分はおとななのか?それともこどもなのか?』
『おとなとは、いったいなんだろうか』
そんな疑問を持つのは、あなたの年の頃なら誰もが持つ疑問よ。
分からないことが恥ずかしいことじゃない。
むしろ、きちんとその疑問に向き合えてるあなたは素敵。
答えが無いことにモヤモヤしたりイライラしたりもすると思うけど、その疑問を抱いた自分を嫌悪しないで」
さて!と紫陽は、手を叩いた。
「それを踏まえて、紫陽先生が侑士くんの疑問に『回答』します。
『その疑問を考えたあなたは、おとなと言えるでしょう。
しかし、それだけであなたを『おとなだ』と断定することは、おとなである自認がある私にはできません』
これが、紫陽先生の答えですっ」
「べんきょう」の時間。
小さな子どもたちからの質問に答える時のように言った紫陽に、侑士は、ふは、と笑った。
「わかった人ー?」
片手を上げて挙手を促す紫陽に、えー?と照れたように笑う侑士。
「あら?お返事が無いわ。
わかったよーって人はお返事してー?」
「くくっ、わかった、わかった」
「よろしいですっ
では、今日の特別なお勉強は終わりっ!
そろそろ寝る時間よ」
歯を磨いてベッドに入って、と侑士を促す。
「なあ、紫陽先生」
「なぁに?」
「俺んこと、見つけてくれておおきにね」
「侑士...」
「おやすみなさい」
「おやすみ、いい夢見てね」
「せんせもな」
きちんと閉められた扉。
「おとなとはなにか、か」
✜