第9章 9.
「あとはぁ...」
「出尽くした?」
「うん、浮かばへん」
「いいわよ」
侑士が考えたおとなと子どもの違いを2枚の紙に書き留めていた紫陽は、その一つを侑士に渡した。
「この中で、侑士自身が自分で『当てはまる』と思うものに◯、『半分は当てはまる』と思うものに△を書いて」
はい、と自身が愛用する万年筆を貸し、書き込みを始めた侑士を確認すると、別のペンを取った。
「できた?」
「んー、うん」
「よし、じゃあマークだけを隠すように紙を折って」
「こう?」
「そう。もう一度折り返して、交換しましょう」
交換?と首を傾げる侑士に、自身も書き込んで折った紙を折って差し出す。
「どうぞ」
「はい、どうぞ」
折り目を開こうとした侑士を止めた。
「今度は、その折った所に、私に当てはまると思うマークを、侑士が考えて」
「紫陽先生のことについて書くん?」
「そう。質問項目は、全く一緒。
1つ目は『背が高いか』。
侑士から見て、私の背は高い?」
「いや?
紫陽先生、俺よりちいこいやん」
「じゃあ、✕を書いて。
そう、そのまま最後まで、折った中を見ないで、直感で書いて」
これは◯かなぁ、これはちゃうわ、と言いながらマークをつけていく。
紫陽も、侑士について書いていく。
「できたで」
「私も書けた。
じゃあ、戻して...」
再び紙を交換した。
「開けてええ?」
「いいわよ」
◯と✕が揃っている項目もあれば、それぞれ異なる項目もあった。
「これは、正解不正解があるものじゃないの。
オトナかどうかを考えるために必要そうな要素が、まず、これだけたくさんある。
私と侑士で全く同じ質問について、それぞれ自身のことを答えたはずなのに、答えが異なるものがあるでしょう」
「うん」
「それが、『自認』と『承認』、自分でそうだと思うことと、周りがそうだと感じていることの乖離、差よ」
「俺が、俺のことを『こうや』と思っとっても、周りは『そうやない』と思っとることもある...?」
「そう。
これだけのことについて、◯か△か✕かを判断していって、お互いが全く同じ答えになると思う?」
「そうそうならへんわなぁ」
そうでしょう、と新たな紙を取り出す。
「侑士を見た人が、『どこからどんなふうに見ているのか』で、その見え方や判断は変わるわ」