第9章 9.
✜
「紫陽せんせー」
コンコン、と遠慮がちなノックは、侑士だ。
「どうぞー」
「失礼します」
空木さんや葵さんのように入ってきた侑士に、どうしたの?と聞く。
「紫陽先生、俺っておとな?こども?」
「え?」
なあ、どっち?と悩ましげな侑士にソファを勧めた。
「どうして、その疑問が浮かんだの?」
「今日、夕飯ん時、空木はんの手伝い、忘れてしもうてん」
「うん」
「せやけど、空木はん、怒らんと『手術したんやから安静にしとき』って。
おまけに、ちいこい子たちみたいに、元気に飯食うて遊んで勉強しとけばええんやって言いはったんや」
「うん」
「『おとなである必要ない』て。
ほんなら、俺、『子ども』なん?『おとな』なん?て聞いたら、『どっちでも』て。俺が心地ええ方におったらええって」
「なるほど」
「ほんで考えたんやけど、俺、どっちでもないなぁって。
空木はんとか葵はんみたいでも無いし、かと言ってみんなよりはオトナみたいなこともできるようなってきたし...
でも、レイには『こどもやない』言われたけど、カレンは『いいのよ。侑士はわからないんだから』って言うし...」
心底悩んでいる様子に何度も頷く。
「どっちやと思う?」
「そうねぇ、私は空木さんの意見に近いかも」
「ほな、俺は子ども?」
「『子どもであってほしい』と思ってる」
「こどもで、あってほしい...?」
「自分はおとななのかこどもなのか。
ここで『おとな』と思われる人たちに比べると、自分はまだできないこともあるし、まだまだ分からないことも多いから『こども』な気もする。けど、見た目を考えたら、侑士はどちらかといえば『おとな』に近いから、『おとな』なのかも?
あれ?自分はどっち?というのが、今の侑士ね」
そや、と侑士は何度も頷いた。
「では、『おとな』か『こども』か。
それを分ける『基準』を考えてみましょうか。
『おとな』と『こども』の違いって、何かしら?」
「ええっと...身長?」
「身長が?」
「おとなは背ぇ高いやろ?子どもはちいこい」
「ふむふむ。ほかには?」
「んー、あっおとなは『ものしり』や。
何聞いても、なんかしら答えてくれる。空木はんもセンセーも」
「なるほど」
侑士の考えが出尽くすまで、紫陽は、その答えひとつひとつを書き留めた。