第8章 8.
「1、5、10...」
見慣れないコインを、書かれている数字が小さい値から並べてみる。
「数字も小さいし、コインのサイズも小さいから、おっきい方が価値があるんかな?」
「そうね。
数字の表し方は同じみたいだから、大小の概念も共通してるんじゃないかしら」
「そしたら、このいっちゃん小こいんがいっちゃん安ぅて、いっちゃんおっきいんがいっちゃん価値あるいうことやろなぁ」
「こうもデザインが違うと、同じ『1』でも価値は違いそうね」
薬袋氏も見たことがないという紙幣と貨幣。
「『おしごと』でもらえるんは、時間換算で1,500シークやろ?
1,500いうんをこの通貨で作ろう思ったら...これの1,000て書いてある紙1枚とコイン1枚?」
1,000と書いてある紙と500と刻印のあるコインと、机の端に置いてあるガラス瓶から『こちら』の通貨であるコインのうち、500と書いてある金貨を隣に3枚並べる。
「なんとなくやけど、金貨の方が価値ありそうな気がするんやけど...?」
「せめて、この銀貨1枚で何が買えるのかが分かればいいわね」
「100シークでなんや買えるもん言うたら...」
「小さなお菓子...キャンディや果物蜜なら3~5個くらい買えるわね」
「万年筆のインクやったら、ほんのちょっとも買われへんな」
「紙を買うのも難しそう...
塩も、精々買えて150gくらい」
「布やったらどんくらい買えるやろ?」
「コットンなら10cm程度よ。
糸なら、100m買えるか買えないかといったところ」
「これで『何が買えるか』がわからへんと、比べよう無いなぁ」
むー、と机のコインを眺めていた侑士は、わからん!とそれらをかき集めた。
「どうにせよ、たぶん、この世界じゃ換金もでけへんやろ。
前ん俺がこの金をどう手に入れたんもわからへんし。
ミナせんせーが調べてくれはるの待っとこ」
「そうね。
ほかに何か見覚えのあるものとかある?」
「せやなぁ...ええっと、本と...これも本や。この薄いんも本か?めっちゃ本持っとるやん、俺...
あとは...なんやろ?」
侑士が手にしたのは、真っ黒な鏡のようなものだった。
「なんや、これ?」
「手鏡、かしら?」
「けど真っ黒やで」
この丸いんなんやろ?と上部に見つけた小さな穴のようなものを凝視した。