• テキストサイズ

意志あるところに道は開ける

第1章 1.


「加減しなくていいわ。
 あなたの今の力を知りたいの。
 力いっぱい、握りしめて」
「そんな、そんなっ」
「いいから」

こんな貧相な身体で、筋肉もまともにないだろう。

でも、でもっと繰り返す彼に、考える。

「これは、命令、よ」

そう言うと、ビクッ!として、分かりました、と言った。

(なるほど。)
「し、失礼、しますっ」

一度、深く息を吐いて、えいっと言うように目を閉じて、両手でギュッと握った。

(右利きね)
「ありがとう。いいわ」
「い、いえ。すみません。ごめんなさい」

そう言うと、震える指先で支える手の甲に震える唇でキスをした。
そして、そそくさと手を離して、ベッドの上で正座をした。

「どうしてキスをしたの?」
「え?」

上がった顔に、どうして?と聞くと、えっと、とまた俯く。

「ご、ご主人様?の手を、きつく、握ってしもうたっ
 ち、違います!握ってしまったからっです!」

一息に言うと、ごめんなさい、ごめんなさい、と額をベッドにこすりつけた。

「申し訳ありませんっ
 以後、気をつけますっ
 もう、訛った言葉を使いませんっすいません」

ノロノロと腰を上げると、震えながらベットに手と膝をついて、唇を噛み締めた。

「なにをしてるの?」
「え?」

ベットに腰掛け、四つん這いの彼に、座ったら?と隣を叩いた。

「え?えっと...」
「膝、無理をしない方がいいわ。
 ほら、足を下ろして座って」
「はっはいっ」

手をつきながら隣に来ると、失礼します、と恐る恐る隣に座った。 

コンコン、というノックの音に、彼は慌ててベッドから飛び降り、足元に正座した。


「ご依頼のものをお持ちしました」

紙袋いくつかを手にした黒服を見ようとしない彼。

「ありがとう。借りるわよ」
部屋の隅にある、ガラス張りのシャワールームを指さした。

「表に、車を回しておいて」

車の鍵を受け取った黒服が、承知いたしました、と恭しく頭を下げ、カチャリと扉を閉めても、彼は頭を上げなかった。

「座りなさい」

そう言うと、はい、と即答して、また、ピタリと体を合わせて隣に腰かけた。

 ✜
/ 151ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp