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意志あるところに道は開ける

第8章 8.



「紫陽先生っ」
「侑士。
 ごきげんね。体調はどう?」
「なーんもないで。元気や」
「それはよかった」

朝食後。

べんきょうやおしごとの時間が始まった館の『診察室』は静かだった。

「言われた通り、朝は普通に食うたよ」
「お風呂は、昨日入ってからまた入ったりした?」
「してへん。水遊びもして無い」
「よろしいです。
 状態を見たいから、背中を向けて」
「ん」

診察用の丸椅子で反転し、紫陽に背を向けた侑士は、結っていない髪を手で上げて、少し、俯いた。

「範囲としては、このくらい」
「ん」

紫陽の温かな柔らかい指先が、生え際より少し下辺りをなぞった。

「この範囲の表皮、触れている皮膚を切り取って、周囲の皮膚を伸ばしながら縫い合わせる手術よ」
「わかった」
「前にも聞いたけど、あなた、手術を受けた経験があるの?」
「んー、記憶には無いで」

キイ、と丸椅子を鳴らして振り返った。

「なして?」
「ずいぶん、その...怖がらないのね」
「んー、怖くはないで?
 不安...も無いな」
(医学を学んでいたからかしら...?)

じっと見つめる紫陽に、侑士が首を傾げる。

「俺、なんや、変か...?」
「いいえ、変じゃないわ。
 強いのね」
「『強い』?」
「大人でも、『手術』と聞くと大抵の人は多少なりとも恐れるものよ」
「そうなん?
 紫陽先生がやるんやから、平気やって」

随分と信頼されたものだ、と思う。

「手術の間、侑士には眠っていてもらうわ」
「寝るって、さっき起きたばっかりなんやけど...?」
「ええ、だから、あなたの体重に合う量の麻酔を使うの」
「ますい...?」
「眠りと感覚の麻痺を促すお薬よ。
 点滴と吸引薬があるんだけど、どっちが安心できそう?」
「うーん...吸引って、口から入れるん?」
「入れるというよりは、吸う感じね。
 以前、ハナの呼吸がゼーゼーと音を出すようになった時を覚えてる?」
「ああ、覚えとる。ぜんそくやったっけ?」
よく覚えていました、と頷く。

「ハナの場合、気管支という空気を吸うための管が細くなってしまってうまく呼吸ができなくなって苦しくなっちゃう。
 その狭くなった気管支を広げるためにあの薬を吸うの」
「俺の場合は眠たなるいうこと?」

そう、と答え、どちらにする?と問う。
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