第7章 7.
「市場」から引き受けた荷物にあった彼の写真付きの何か。
それの写真では、彼はリムレスのまんまるなレンズの眼鏡をかけていた。
(言われてみれば、あまり生活の中で見えづらそうな仕草が無かった...?)
本も読んでいたし、字も書いていた。
(視力が悪かったわけでは無い?)
生活に不自由なのを言い出せないだけかと思い、眼鏡屋に連れてきたものの、視力検査の結果は「矯正不要」。
店主には申し訳無いが、商品を買うこと無く店を出る。
「なんか、すんません...」
「侑士が気にすることじゃないわ!
私が先走っただけよっ」
先に確認しておけばよかったのよ、と笑う紫陽。
「けど、目が悪いわけちゃうのに、なしてメガネかけとったんやろ?」
「今、眼鏡をしてない状態に違和感はある?」
「うーん、ようわからん」
「もし、必要だと思ったら言って」
「わかったわ」
「侑士、欲しいものはないの?」
「欲しいもん...?」
うーん、と道端で考える侑士を待つ。
「すんません。なんも、浮かばへん」
「お店の通りを見ながら広場に戻りましょうか」
行きましょう、と歩み出そうとした時、おっと、ぶつかりかけた男たちの一人が体をずらした。
「ごめんなさい」
「いいえ...っ」
謝った侑士に、にこやかだった男が、急に顔色を変え、吐き捨てるように言った。
「『いろうり』めっ」
侑士よりも背の低い男の連れが、侑士の頭の先から爪先までをじろり、と睨め、紫陽を見た。
「ふん。悲しいねぇ
男に相手にされない風貌でもなかろうに...」
「なあ、姐さん。
ソレ、いくらだい?」
ニヤニヤとし笑い方で、侑士を顎で指した男。
「っ行きましょう」
「えっ?あ、紫陽はん?」
早足に立ち去る紫陽に腕を引かれ、少し駆け足になる侑士。
低い位置の紫陽の顔は、明らかに怒りを孕んでいる。
強い足取りであまり人通りの無い場所まで来ると、足を止めた紫陽。
「なあ、紫陽はん」
「...なぁに?」
いつものように、視線を合わせて笑顔の紫陽。
「『いろうり』って、なん?」
「っ!」
顔色を変えた紫陽に、聞いてはまずかったのだろうか、と侑士は黙った。
「侑士」
「なん?」
「首の、消させてくれる?」
首の?と己の首に触れ、侑士は首を傾げた。
✜