第7章 7.
ざわざわとした音。
微かに四方から聞き取れる呼び込みの声。
大きな荷籠を抱えた商人たちが、忙しなく右往左往している往来の脇で、侑士は降りた馬車の陰に隠れた。
「今日はこの通りを、東から西へ、こちらからあちらへ歩きながらお店を見てみましょう。
見てみたいものや、気になるものがあったら、声をかけてね」
「「「はーいっ!」」」
二人一組で手を繋がせ、すぐに人数が確認できるように背の順に並ばせた子どもたちの最後尾に侑士を並ばせる。
「遅れている子や、はぐれそうになっている子がいないか見てあげて。
もちろん、侑士も気になるお店があったら、声をかけていいからね」
「わかったわ」
まずは野菜や果物が並ぶ青果店。
なにこれー?と店頭の商品を触ろうとする子どもたちをなだめながら、これはブドウ、赤いのはリンゴ。全体が緑で丸いのがキャベツで、少し長くて根元が白いのはハクサイ、と教授しながら進む紫陽についていく。
「やあ、小さなお客さん。
甘いお菓子はどうだい?」
ほら飴だよ、と笑顔で差し出す商人に、ザッと店を見渡した紫陽は、わー!と受け取ろうとした子どもたちを止めた。
「ごめんなさい。まだ、この子たちには早いので...」
そそくさと離れる紫陽に、子どもたちはブーイングの嵐だったが、お菓子は別のところで買いましょうね、と笑顔で先に進む。
店の前を通る時、横目に店を見た侑士。
(「飴薬」...菓子やのぉて薬やったんか)
飴状の薬は、咳止めやのどの痛みを抑えるための薬によくある形状だ。
商人が子どもたちに差し出していた飴を棚に戻す。
(『夢幻飴』...
せんせーが止めた言うことは、『よぉないモン』なんかもな)
気ぃつけよ、と前を向くと、通りの終わりにきており、先に広くひらけた場所があった。
「広場のお店は自由に見ていいわよ。
お兄さんお姉さんたちは、小さいさんたちを見てあげてね」
はーい!と駆け出しだ子どもたちに、広場からは出ないのよ!と声をかける紫陽。
誰がどの辺りに向かったかを把握すると、キョロ、と遠くまで見渡した。
市場に姿が見えない彼を呼ぶ。
「侑士!」
「おるで」
「キャッ!」
すぐ後ろにいた彼に、驚かさないで、と胸を押さえる。
「行かないの?」
返事とも言えない声の侑士。