第7章 7.
「侑士、危ないから頭を引っ込めて」
「うん、」
ガコガコと音を立てながら走る馬車の乗り心地は決していいものではなかったが、上にだけ幌を張った荷車から覗き見る景色は、侑士の好奇心を湧き立てるのには十分過ぎた。
「侑士、他の子たちが真似しちゃう」
座りなさい、と少し強く紫陽に言われ、ごめんなさい。と荷車に座ると、隣に座るレイが呆れたような声を上げた。
「子どもじゃないんだからさ。
一度言われたらすぐに座れよ」
「ス、スマン」
「お前がもし、ここから落ちでもしたら、もう市場に連れて行ってもらえなくなるんだからなっ」
鋭い目つきで見るレイに、悪かったわ、と膝を抱えて小さくなった。
「レイ、侑士は初めて馬車に乗ったのよ。
そんな言い方は無いわ」
気にしなくていいのよ、と向かいに座るカレンが言った。
「紫陽さんにも言われたでしょう?
『背が高いから年上に見えるかもしれないけど、まだ知らないことばかりだから、優しく教えてあげて』って」
「ふん。あまっちろいんだよっ」
「なによ、女の子には口も聞けないくせにっ
気にしちゃダメよ、侑士。
レイは憎まれ口叩くのがクセなんだから。
はいはい、って受け流してあげるのが大人ってもんよ」
侑士より一つから三つほど年下ながら、しっかり者の女の子のカレンといつも憎まれ口を叩く男の子のレイ。
「せやけど、紫陽はんに言われても座らんかった俺が悪いんやから、レイは正しいで」
「けど、言い方ってものがあるわ
レイはいつも人を怒らせる言い方をするんだから」
「悪うござんしたねっそれか俺ってもんさ」
「かっこつけになってないんだら」
「なんだとっ!?」
「ガミガミうるさいより、侑士みたいにおとなしくて素直な方がかっこいいわっ」
「っ、べつにっお前にかっこいいなんか思われたくねぇし!」
いがみ合う2人にオロオロとしていた侑士は、つい、と袖を引かれて視線を下げた。
「2人はいつもこうだから」
ニコ、と見上げるシュウは、小柄でおとなしく、侑士が来るまでは一番頭がいい子だった。
「仲が良いほどけんかするんだ、特に女と男は」
「そうなん?」
「そうさ」
だから気にすることないさ、と笑うシュウに、そういうもんなんかなぁ、と口喧嘩している二人を見た。
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