第6章 6.
「美しくて、りっぱ、か」
自室に戻り、辞書を取り出す。
「『りっぱ』...
『立派』。見事なこと。非難するするところがない。優れていて堂々としている様」
頭に浮かんだのは、図書室で読んだ物語の王様。
「『美しくて』は、『きれい』とおんなし意味やったな」
美しい、か、と自分の頬に触れる。
「俺は、紫陽せんせーが、『立派』やし『美しい』と思うねんけどな...」
女性の場合は、何といったらいいのだろうか?と辞書をめくってみたがわからない。
図書室の別の本で調べてみようと、部屋を出た。
「あ、侑士」
ロビーを通り過ぎようとした時、紫陽の声に足を止める。
「来てくれる?」
紫陽について行くと、「先生室」と呼ばれる、紫陽の私室とはまた別で、葵や空木が休憩に使う部屋につく。
そこには、一組の老夫婦がいた。
俯いていた二人は、ぱっと顔を上げて、侑士の顔を穴があくほど見た。
「こんにちは」
戸惑いがちな声色の老婦人に、こんにちは、と小さな声で頭を下げた。
隣で足を開いて、腕を組んでため息をついた年老いた男。
「あなた、」
そっと膝に触れる老婦人に、不機嫌そうなままこちらを見た。
「ヒョロくて色も白か...
鍬一つも持ちきらんようなこがな男、息子と違う」
(息子...?)
男の子ども、という意味だ、と紫陽を見る。
「年の頃も、この子の方がずっと年下です。
心苦しいですが、ここに息子さんは...」
「そう、よね。
ごめんなさい、騒ぎ立てて」
「いえ」
悪かったわね、と弱々しく腰を上げた婦人。
「何か力になれることがあれば、いつでも言ってください」
「ありがとう、紫陽ちゃん。
お父さん、帰りましょう」
「お気をつけて」
よいしょ、と膝に手をかけて立ち上がろうとする男に手を貸した紫陽は、やっとのことで立ち上がった男に、傍らの杖を渡す。
「余計な期待だけさせよって...」
「お父さんっ」
吐き捨てるように言った老人は、ジロッ、と侑士を睨んで、心許ない足取りで出て行った。
「なんやったん?」
嫌な感じや、と2人が出て行った扉を睨む侑士。
「嫌な気持ちにさせちゃったわね。
ごめんなさい」
「なんかあったん?」
うん、と浮かない顔の紫陽に、侑士は首を傾げた。
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