第5章 5.
「さて、いい感じにまとまりましたね。
それでは、今度はこの生地を、踏みます!」
「「「「ええーっ!?」」」」
踏むのー?と子どもたちが空木に詰め寄る。
「食べ物だよっ無駄にしちゃダメなんだよっ」
「踏んじゃったら食べられなくなるわ」
「ぺったんこになっちゃう...」
「きちょーな小麦粉だよっ」
子どもたちのブーイングに、まあまあ、と空木が言う。
「では、実験してみましょう」
そう言うと生地から2欠片取り出した。
「侑士君、来てください」
「また、俺?」
今日、扱い荒ない?と空木の隣に渋々立つ。
「手を使ってこれを均等に広げてください」
「こう、でええん?」
手の腹を使いながら、広く取られた作業台に、一方の生地を薄く伸ばしていく。
「はい、そろそろいいですよ。
丸くまとめてください」
「丸く、丸く」
つやり、とまとまった生地を別に置くと、では今度はこっち、と袋に入った同じくらいの分量の生地を、床に置いた。
「同じ時間を測ります。
均等に、今度は踏んでください」
「ほんまに踏むん?」
「はい。それはもうけちょんけちょんに。
あ、靴は脱いでくださいね」
紫陽を見ると、できるできる!と応援されるので、仕方なく靴を脱いだ。
「う、お」
危な、と滑りそうになって作業台の角に掴まる。
「均等に、リズムよく!」
「そ、そんな早よ踏まれへんっ」
「手を持ちますから!
1、2!1、2!1、2!
位置を変えてっ1、2!1、2!1、2!」
「おっ、とと、」
「はい!はい!はい!
踏むっ踏むっ踏むっ」
きっついって、これ!と言いながらその場で足踏みする侑士。
「1、2!1、2!1、2!
あははっ」
「ハイッハイッ!ハイッハイッ!」
「たのしー!」
周りで空木と侑士の真似をして遊ぶ子どもたち。
「はい、休憩です」
「ハアッハアッ、きっついわ、これ」
ドサッ、と座り込んだ侑士に、お疲れ様、とコップ一杯の水を差し出した紫陽。
「同じ時間手でこねたものと、足で踏んだものです。
どちらも侑士さんが作業したものですが、ほら。つやが違うでしょう」
どれどれ、と空木が丸めた生地を覗き込む子どもたち。
「ほんとだ。
こっちの方が、ツルンってしてる」
「手でやるよりも、足でやる方が力が加わります。
その分いい麺になるんですよ」