第5章 5.
「侑士君、これって真ん中?」
「見して」
作業台の針天秤を真っすぐに見る。
「真ん中、なっとるで」
「よし!」
「こっちに零さんようにな」
隣の大きなボウルを寄せてやり、ゆっくりやで、と、子どもに声をかける。
「はいった!」
「次はお水?」
粉が入るのを固唾を飲んで見ていた子が、これ?と測られた塩水を持ってきた。
「空木さんは、『ちょっとずつ』って言ってたけど...」
「ちょっとって、どれくらい?」
「さあ?」
うーん?と粉と水を前に、全員が首を傾げる。
「『ほんの少し』?」
「花壇にやる水くらい?」
「あれは『たっぷり』だよ。
紫陽さん、いつも『植物にはお水をたっぷり』って言うもん」
「そうだった」
うーん?と手が止まってしまった子どもたちに、紫陽が声をかけた。
「どこまでできたかな?」
「粉を量ったよ」
「ボウルに入れた」
「なあ、紫陽さん、『ちょっとずつ』ってどんくらいやろ?」
塩水のカップを指差した侑士。
「そうね。
この場合、この粉を一つの纏まりにするのが水の役割。
あまりたくさん入れてしまうと、泥のようになって固まらないから、まずは1/4、ここまでの分を入れてみましょうか」
「「「はーい」」」
「1/4、1/4...よしっ」
慎重に水を注ぎ入れた侑士。
「次に、手で粉と水を馴染ませるように混ぜます。
手は、怒った猫の手にしましょう」
指を曲げて、シャーッと空木が言うと、あははっ!と子どもたちの笑い声が上がった。
「ベチャッてするぅー」
「つめたーい!」
まずは年少の子どもたちが粉と水を混ぜる。
「はい、またお水を入れますよー」
水を足し、今度は、さっきの子たちよりも少し年上の子どもたちが捏ねていく。
「固まってきた」
「なんか粘土みたーい」
「柔らかくなってるよ」
「滑らかにまとまって、少しつやが出るくらいまで捏ねます」
「おもたーい!」
「全体が混ざるように、生地を回しながら捏ねてくださいね」
「回んないよっ」
「疲れたー」
子どもたちの文句に苦笑いの紫陽。
「あらあら」
「貸してみぃ」
服の袖を捲くると侑士は片腕でボウルを傾け、いくつかの塊になった小麦粉をあっという間に一つにまとめた。
「侑士君、すごい!」
子どもたちの声に、少し、侑士が得意げに笑ってみせた。