第5章 5.
「お水?」
「塩水やって。
塩っ辛いで」
「しおみず?」
「海ん水みたいな味、するんや」
空木が用意したのは、浅広の器と強力粉と塩水。
「これで、『うどん』を作ります」
やったー!と喜んだり、うどん?と首を傾げる子どもたち。
「『うどん』というのは、麺類の一種です
麺のもの。なにがありますか?」
空木に聞かれた子どもたちが、はいっ!はい、と次々に手を挙げる。
「やきそばっ」 「ラーメン?」 「そうめんっ」
「春雨?」 「あれ、麺?」
「んー...あっビーフン!」
「ビーフンは、違うでしょう?」
「糸こんにゃく!」
「それは絶対違うっ!」
「えー?うそー?」
次々に出てくる料理や食材に、ウンウン、と満足そうに頷く空木。
「ビーフンも麺の仲間と言えます。
何をもって麺とするか。
言わば、『定義』は様々ありますが、そうですね。この場では、『デンプン質を主成分とした細長い形状のもの』を『麺』と定義しましょう」
定義ってなに?と隣の子どもに聞かれた侑士は、えっとな、としばらく悩んだ。
「『決まり』『ルール』とおんなし意味やと思う。
えーっと、おんなし畑で採れる食べもんでも、『野菜』言うんと『くだもん』言うんとあるやろ」
「うん」
「あー...これは、俺だけの『ルール』、『定義』やけど、頭より高い木から取れるんが『くだもん』。背ぇより低いやつの、枝とか根っこにできてるんが『野菜』やと思てる。
やから、『定義』ってんは...その言葉の『意味』とおんなしやと思う」
「...うんっ」
「詳しゅうは、あとで紫陽はんに聞いてや」
「や、なんとなーく、わかった気がする。
ありがとう」
「どういたしまして、やで」
幾分識字ができるようになってきた侑士は、わからないとすぐに辞書や辞典で調べることが習慣づいていた。
紫陽が言った通り、賢さを持っていたため「学ぶ」事に苦手意識は無く、着実に知識を得ている。
困ってしまった時は、「紫陽さんに聞いて」というのは、空木も含め、「わからないことはわからないと言っていい」と紫陽に学んできた、ある程度の年長者にとっての、合言葉のようになっていた。
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