第4章 4.
「侑士を知らない?」
心配そうにキッチンに来た紫陽は、いないんですか?と空木に聞かれ、ええ、と口元に手を当てる。
「昼食の片付けを手伝ってくださったあと、どこかに行かれたようでしたが...」
「どこに行くか言ってなかった?」
「すみません。
てっきり紫陽様のところだと思ったもので、詳しく聞かずに...」
「部屋にも、庭にもいないのよ。
畑にも来てないと言うし、子どもたちも、今日は昼食のあと見てないって...」
「うーん...あっ、図書室は?」
「図書室...」
ええ、と空木。
「侑士さん、ずいぶん料理に慣れてこられたようだったので、レシピをお見せしたら、食い入るように見ていらっしゃったんです。
図書室には料理の本もたくさんあると話したら、少し興味を示されていたように見受けたので...」
「行ってみるわ。ありがとう、空木さん」
「とんでもないことです。
見つからないときは、また、お声掛けください」
探します、と言った空木に礼を言って、図書室へと向かう。
(確かに、あのキッシュを作ってくれてから、侑士はよくキッチンを手伝っていたわね)
料理が気に入ったのかしら、と向かった図書室の扉が開いていた。
「侑士?いるの?」
中に声をかけてみたが返事は無い。
奥かしら、と本棚の間を見ながら奥へ向かう。
「侑士」
ここにいたの、と見た彼は、床にへばりつくようにして本を読んでいた。
「侑士?なにをしているの?」
「あ、紫陽はん...」
ようやく顔を上げた侑士。
何をしていたの?と侑士の手元を見た紫陽は驚いた。
「っあなた!」
「あ、すんません。紙、勝手に...」
子どもたちが自由に使えるように置いている紙には、赤い歪な文字。
指の先から滲む血で、侑士は紙に本に載っているレシピを書き写していた。
「あなた...」
「ごめんなさい...せやけど、本は汚してへんよ。
床にも垂らしてへんから、あっ」
ポタ、と指先から落ちた鮮血の雫が、床に丸く跡をつけた。
「やってもうた」
拭くもん、と辺りを見渡す侑士。
「侑士っ」
「っわ、」
何も見つからなかったのか、服を脱ごうと膝で立つ彼を抱き締める。
「紫陽はん?」
強く抱きしめた彼は、どうしたん?といつも声で聞いた。
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