第4章 4.
✜
「「「「おいしー!」」」」
ワイワイとした食卓に、侑士はフォークを手にしたまま固まっていた。
「キッシュは、侑士さんお手製ですよ」
「おいしいよっ」
「すごーい!」
「空木さん、負けた?」
子どもたちの声に、あ、ありえへんっ!と慌てて首を振る。
「俺、混ぜて入れただけやっ」
「私は食材を用意して順序を説明しただけですから」
空木の言葉に、クスクスと紫陽が笑った。
「ちょうどいいじゃない。
侑士が料理をできるようになったら、空木の夢、『世界料理漫遊旅行』が一歩近づくわ」
紫陽の言葉に、うーん、と考える空木。
「侑士さん、調理場、来ません?」
「『ちょっとありだな』って思ってるじゃない」
おかしそうに笑った紫陽。
「どう?料理は?」
どう、と聞かれ、考える。
「おもろかった、です」
そう、と微笑む紫陽。
「食いもん、こんなに種類があるやなんて忘れとった。
甘いんのとか、しょっぱいんのとか、いろんな味、思い出した。
これも、なんか、ちょっと懐かしい気がする」
キッシュのアパレイユをフォークですくう。
「俺、たまご、食うとったんかなぁ?」
記憶には、美味しいものなんて一切無かった。
でも、もうあの頃の『味』は忘れているし、思い出したくも無い。
「侑士さんがお生まれになった土地、もしくはお育ちになった土地に、近しい料理があったのかもしれませんね」
ふむ、と考えた空木。
「ここに来て、だいぶいろいろなものを口にされたと思いますが、特にお口にあったものがありませんか?」
気になったものとか、と聞かれ、えっと、と考える。
伺うように見た紫陽は、にこやかに食事をしているだけだった。
「あ、」
一つ、思いついた。
「ええっと...色の薄い、魚かなぁ?そんな味がした汁に、白い、長い、柔いんがはいったやつ、とか」
「それっておうどん?」
おうどん?と子どもの声に首を傾げる。
「おっきいお椀にさ、金色のお汁と白い麺が入ってるやつ」
金色のお汁、という言葉に、たぶんそれ、と呟く。
「あったかぁて、柔い長いん入ってんねん」
話しながら、あっ!と思い出す。
「なんや、柔くて、噛んだらジュワって味が出る...茶色?黄色?のこんなん乗ってん」
こんくらい、と、指で四角を作る。