第4章 4.
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「ミナ先生はお薬屋さんだよ」
「ミナ、さん?」
はちみつをたっぷりと入れた紅茶を飲みながら、ショートブレッドに齧りついている『先輩』を見る。
「うん。
紫陽先生が使う、お薬とかを作って届けてくれる人なんだ。
たまに、畑に植える種や、僕たちの生活に必要なものの支援をしてくれてるよ。
ええっと、確か...あっ『やすざいし』だよっ」
「『やすざいし』じゃなくて、『薬剤師』!」
「『やくざいし』...?」
なんや難しそうやなぁ、とショートブレッドを齧る。
「っ甘い...」
「それ、オレンジ味だよっ
このコンフィと一緒に作ったオレンジピールを刻んだやつが入ってるんだよ」
サクッとした食感の中に、ふわりと口に広がる甘酸っぱい柑橘の香り。
細かく切られたオレンジピールを噛む。
最近、ようやく「味」に慣れてきた。
甘い、辛い、酸っぱい、苦い、しょっぱい。
「しょっぱいは辛いの仲間。
うまみというものもあるのよ」
紫陽が教えてくれた、その「うまみ」が自分には、まだ、よく分からない。
薄いブラックココアで流し込んでいると、屋敷の方から人影が見えた。
「ミナー先生っ」
「おやおや。
いいものを食べてるねぇ」
「ショートブレッド!
紅茶あるよっ」
「ココアもっ」
紫陽と屋敷を出てきた薬袋の声に振り返る。
来た時と同じ、大きな荷物を持っている。
「侑士」
紫陽に呼ばれ、なんですか?と歩み寄る。
「薬袋先生」
紫陽を挟んで向き合った薬袋が、ふむ、と侑士を見上げる。
「侑士君、我々ヒトや動物、そうだね、サルやタヌキが生きるために欠かせないものは、なんだろうか?」
「え?」
「なんだと思う?」
なんやろ?と考えてみる。
「うーん...食いもんはいるなぁ。
あと...あっ水や。水がいる。
それから...」
「それから?」
「...空気、空気がいるわ。
こうやって、吸って吐いてできる空気が無いと、苦しゅうて生きられへん」
そうやろ?と2人を見る。
「なんやったん?」
「いや、ちょっとしたクイズだよ。
大正解のご褒美に、これをあげよう」
そう言って、薬袋医師は上着の内ポケットから一本の万年筆を侑士に渡した。
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