第3章 3.
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ペタ、と頬に貼り付けられたものの冷たさに、ん、と身じろぐ。
「ごめんなさいね」
そっとそこを撫で、眉尻を下げる彼女に、ゆるゆると首を横に振った。
「嘔吐したものや排泄したものは、もとは食べたものだけど、それ自体は食べ物ではないの。わかる?」
「...はい」
「あなたは、生きるために強いられていたのね。
でも、もう、必要ないのよ。
食べるべきものを食べて、栄養を取って、健康な排泄をする。
『片付ける』というのは、あの場合は『流す』か『捨てる』。
方法がわからないなら、私を呼んで。
教えるから」
教える?と正面の彼女を見上げる。
「『どうしたらいいか』と、聞いて。
答えるから。約束よ」
そっと手を取られ、小指同士を絡める。
こんなことを聞いていいのか、と戸惑いながら、あの、と彼女を見る。
「なに?」
嬉しそうに首を傾げた顔から視線をそらす。
「その...なんと、お呼びすれば...」
「...あ」
少しの沈黙に、チラ、と彼女を見上げる。
「やだっ、私ったら!」
いやねえ、と照れたように笑った顔に、俯く。
「名前を言ってなかったわね。
私は、しょう」
部屋のベッドから降りると、机から何か持ってきた。
細長いもので、白いものになにか書く。
紫陽
「これで、しょうと読むの」
「しょう、」
そう、と再び何か書く。
一 紫陽
「にのまえ しょう。
私の名前」
「にのまえ...しょう...」
紙に書かれた文字を、そっと指でなぞる。
「ちょっと違うわ。
この書き方は、こう」
手を取り、一緒に文字をなぞる。
「はい」
彼女は、彼女の名前の隣に、何か書き足した。
侑士
「あなたの名前よ」
「俺の、名前?」
貸して、と手を取られ、その文字を一緒になぞる。
「『侑士-ゆうし-』...」
「...そうね。たぶん、『ゆうし』だわ」
いつも呼ばれていた記憶が、少し、残っているのかもしれない。
「『侑』は優しいという意味。人を思いやる気持ち。
『士』は、強く戦う者。力のある者。
あなたは『侑士-ゆうし-』」
じっ、と髪を見つめる髪を撫でた。
「ゆうちゃん」
そう呼ぶと、彼は跳ね上げた顔を赤くした。
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