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意志あるところに道は開ける

第3章 3.


(ひどい傷やなぁ)

風呂を出た脱衣所にあった鏡に映る全裸の自分を嘲笑する。

なぜだかわからないが、長く、体を動かしていない気がした。

胸には肋がうっすらと浮き出ている。

腕を動かしてみると、なんとなく重い。

それでも、軽くなった。
あんなに、気だるく重くかたかった身体が。

痩せた、と言うより、纏わりついていた重い「つきもの」が流れ落ちた気がする。

妙なほどに懐かしく感じる体の清潔に、なぜか脳裏に、薄暗い、牢屋でのことが濁流のように流れ込んできた。

ゾワッ、と背筋を駆け上がってくる憎悪。

「うっ」

ピクッと動いた尻の筋肉に、裸のまま蹲る。

込み上げてきた渦に、震える唇の端から涎が垂れた。

「うぷ、」

手で口を覆い、バッ、と風呂場に駆け戻る。

ぐるぐると渦巻く腹の底に、せっかく食べたまともな食事が込み上げてくる。

「う、うげっ」

ゴロ、と喉元を上がってきた酸い物。

「っげぇ」

ビチャビチャッ、と床に広がる吐瀉物。

鼻をツンと刺すような匂いに、ううっ、と顔を顰める。

 きったねぇな!  オラッきれいにするんだよっ



カラ、と開いた引き戸に、サアと血の気が引いた。

「っ大変っ」
 
 マジで食いあがった!  おい!これも食えっ


下卑た笑い声。

「ハァッ、ハッ」

震える手で床のモノをかき集めると、ネバネバとした感触。
掬い上げると、ドロ、と伸びた。

「ハアッ、ハァッ、ハァッ」

なんとか掌に掬った胃酸の匂いがするものに口を近づける。



「やめなさいっ!」

バシッ!と叩かれた頬に、思考が止まる。

「手を出して」

汚れた手を差し出すと、温かなお湯で洗い流される。

「立って」

膝についた吐瀉物や、床のものも綺麗にすると、顔を洗って、と桶に溜められたお湯を差し出された。

ノロノロとそれで顔を洗う。

「口の中をゆすいで。
 飲まないのよっこっちに吐くの。
 ぺっ、て」

言われたとおり、口に含んだ水を吐く。

「いい?
 体から出たものは口にするものじゃないの!
 それが自分のものでもっ
 本来、出すべきところではないところで出した時は、片付ければいいの。トイレに流すか、生ゴミに捨てるか。
 わかる?
 あなたが食べようとしたものは、ゴミなのっ」

わかったわね?と真っすぐに見る栗色の瞳に、ゆっくりと頷いた。
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