第3章 3.
「はい、こっちの腕、あげるわね」
優しく右腕を持ち上げられる。
ふわふわした真っ白な泡がついた柔らかいタオルが腕を撫でる。
木桶では無い、つるりとしていて冷たかった水桶に溜められた水は温かくて、徐々に体が温まってきた。
「首より下に、お湯をかけるわよ」
「はい、」
熱湯か冷水かと最初は怯えたそれは、程よく温かく、ホカホカと湯気を立てながら溜まっている。
自分が入る水桶に溜まった温かい水を何度も身体に掛けられると、身体にまとわりついていた泡が流れていく。
「よしっ!」
満足そうに彼女が言うと、なんだか、首から下にぶら下げていたものがきれいさっぱり消えたような気がした。
「一度、お湯を流すわね」
お湯を流す?と見ていると、彼女は自分が入る水桶の底にあった栓を取った。
ザアザアと音を立てながら、薄汚れた泡とともに温かい水がどんどん無くなる。
「っくしゅんっ!」
ブル、と震える体を抱くと、ちょっと待ってね、と彼女は水桶の縁にかけられていた、先端が変な形のホースを手にした。
細い水をたくさん出すそれに手を出すと、うん、と水桶の中に水を入れ始めた。
もくもくと出てきた煙は、吸っても咳き込むことはなく、むしろ、なんだか喉が潤ってきた気がする。
足元に溜まっていく温かい水に、気持ちいい、と足首まで浸かった足を揺らす。
「座ってもいいわよ。
足を滑らせないようにね」
腰を下ろしていいということらしい。
桶の縁に手をかけて、恐る恐る腰を下ろすと、尻に触れた水に、ビクッ!とする。
「ちょっと熱いかしら?」
そう言って、手桶で溜まる温かい水を掻き回す。
「どうかしら?」
そっと足を曲げて膝から入ると、程よく温かい。
「はぁ」
つい、口からため息が漏れた。
「脚を伸ばしたら?
頭をこっちにして...そう」
左右に余る空間に足を伸ばし、ゆっくりと背中を倒すと、首筋に柔らかい感触。
「頭を触るわね。
ちょっとだけ首を上げて」
言われたとおりにすると、首筋を撫でるようにして髪の毛を掬われる。
首裏に触れる手が擽ったくて首を竦めるとクスクスと笑い声。
「ごめんなさい。擽ったかったのね
髪を洗うから、そのまま首を縁に当てて、上を向いて」
言われたとおりにすると、怖くないからね、と微笑む彼女を見上げた。
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