第3章 3.
カタ
目の前の扉が軋んだ音に、ビクッ、と肩を跳ね上げ、身を縮こませる。
キィ
(おしまいや)
真っ暗だった視界に、細く差し込む光。
怒号が飛んでくるか、首根っこを掴まれて引きずり出されるか、と身を難くした。
「あ、」
聞こえたのは、子どもの声。
恐る恐る顔を上げると、自分より年下。
10になっているか、なってないかという位の女の子が、目が合うと、無邪気に笑った。
短い、柔らかそうな指に顔をさされた。
「みーつっけた!」
やったー!と手を挙げると、タッ、と駆けていった。
「しょうせんせー!
いたのー!お兄ちゃん!
暗い色の髪の、若いお兄ちゃーん!」
ここよー!と指さされ、どうしよう、と戸惑っていると、そんな所にいたの?と言う柔らかい声と共に、扉を覗き込んできた顔に、あ、と声が漏れた。
「かくれんぼは、ハナの勝ちね」
やったー!と喜ぶ女の子。
ゴーン ゴーン
低く響く音に、あっ!と子どもたちの顔が輝いた。
「「「「「おやつだー!」」」」」
キャーッ!と言う子供独特の高い声に、うるさい、と耳を塞ぐ。
それでもかすかに聞こえる甲高い声に、んん、と眉根を寄せる。
頭を抱えるようにして耳を塞ぎ、蹲る。
そっ、と肩に触れたものに、顔を上げた。
「大丈夫、大丈夫よ」
怖いものじゃないわ、とクローゼットの中に腰掛けた彼女に抱き寄せられる。
「ごめんなさい。
怖かったのね。
そうよね、突然、見知らぬ人に見つけられたら怖いわね。
もう、しないわ。誓う」
ごめんなさい、とゆっくりと頭を撫でられた。
「でもね、もう、隠れなくていいの。
嫌なことは、嫌と言っていいのよ。
好きなものも、好きと言っていいの。
ここで、『あなた』を見つけてほしいの。
ほんの少しだけど、手助けをさせてくれる?」
やわらかな、清潔な石鹸の香りがする彼女の服を掴む。
「大丈夫。
大丈夫だからね」
久しく触れていなかった人の体温。
ぎゅうぎゅうと顔を押し付けると、ツン、と鼻の奥が痛んで、体を震わせながら、頭に頬を寄せた。
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