第3章 3.
ガシャン
金物がぶつかる音に、跳ね起きた。
「も、申し訳ありませんっごめんなさい」
ふらつく体で額を擦り付けた床は床なんかじゃなくて、フワ、と額に触れた。
「な、んや?」
上体を起こすと、膝立ちのまま、フラ、と身体が傾く。
「あ、わっ」
そのまま、隣にボスッと倒れ込んだ。
「い、たない?」
頬に触れるのは、温かく柔らかい。
「ふ、とん...?」
その肌触りの良さに、つい、頬ずりをした。
再び、うと、としてきた意識。
キャハハッ、と高い笑い声が聞こえ、意識がはっきりと目覚めた。
「あったー!」
「しょう先生、こっにもお水、撒いていいー?」
聞こえてくる声は、外からのようだ。
よろよろとベッドから降り、壁紙が途切れた厚い布がかけられてある方から聞こえる、と歩み寄る。
触っていいのか、と金糸の刺繍が入っている臙脂の布を躊躇いつつ捲る。
「っ!」
突然入り込んできたのは、真っ白な一筋。
眩しい、と目を閉じて手を離した。
(なんやろ、)
痛い、とゴシゴシと両手で目を擦る。
「ショウ先生、誰か見てたよー?」
「誰かな?」
「しらない人ー、男の子だった!」
しまった!と片目を擦りながら窓辺から後ずさる。
(怒られるっどないしょうっ)
「目が覚めたのかしら。
みんな、ケガをしないようにね」
はーい!という甲高い声。
ようやく視界が戻ってきた片目を開けて、部屋を見渡すと、大きなクローゼットがあった。
(か、隠れよ)
ふら、と前に立ち、取っ手を片手で引っ張るがなかなか開かない。
(開かへんのかな。
鍵、かかっとるんかな)
ガタガタと鳴らしていると、取っ手の上部に突起を見つけて、親指をかけるとカチ、と音がして扉が開いた。
なかには数着の白い服とタオルがあった。
ええっと、と覗き込み、タオルを払い落とすと、背を屈めて無理やり隙間に入り込む。
指を挟みそうになりながら扉を閉めると、コンコン、と部屋の扉を叩く音がした。
(ばれへん、ばれへん)
大丈夫、と言い聞かせながら、折り込んだ膝をギュ、と抱き込む。
「入るわよ」
(大丈夫、大丈夫や)
震える体を抱き、下唇をきつく噛む。
「ふむ。かくれんぼ上手のようね」
どこに行ったのかしら、という聞き慣れない高い声に、手足を縛る枷が無いことにさえ、気づいていなかった。