第2章 2.
ボロボロと泣き出した彼の髪を撫で続ける。
「ぐすっうっ、姉ちゃん、姉ちゃんっ助けてっ」
布団から出てきた手が、髪を撫でる手首を掴まえて、ぐい、と引き寄せた。
うっ、うっ、と額を寄せて縋る手に、冷たい雫が流れる。
きっと、面倒見のいい姉と仲が良かったのだろう。
親や姉に、何と呼ばれていたかはわからない。
なんとなく、カードは彼の身分を示すものだと思うが、なにを証明しているのかわからない。
(目が悪いのかしら)
写真の彼は、丸レンズの眼鏡をかけていた。
(持ち物にメガネは無かった)
金になりそうだと奪われたか、破損または紛失したか、と涙で張り付いた髪を払ってやると、首筋に何かついていた。
体を寄せて、腿の横に額を擦り付けている彼の髪を払う。
15324192
首裏に、焼き付けたような赤い数字。
「イチゴー、サンニー、ヨンイチ、キュウニ」
なにかしら?と頭で繰り返す。
「い、ご、さ、に、よ、い、く、に」
ピンとくるものがない、と考える。
「いっせんごひゃく、」
そこまで言って、ああ、と口を噤んだ。
15324192
それは、彼にふられていた「商品番号」だ。
手首にシルバーは無い。足首にも。
腕や腿を見てみたが、刻まれた数字はこれだけだった。
早急に消そう、と、握る手に頬を当てていつの間にか穏やかに寝息を立てている彼の頭を撫でる。
「オカン...」
地方の田舎で、母親を指す訛り言葉だ。
寝言をもらし、ん、と手にすり寄って、また、オカン...と零した彼の目から、つ、とまた涙が溢れ出た。
それを指先でぬぐってやると、その雫は、とても温かかった。
(大人びて見えるけど、実年齢は幼いのかしら)
見た目、そろそろ親から独り立ちしていてもおかしくなさそうだ。
(20...は、ないわね。
18...17...16...15くらいかしら?)
一番アンバランスな年頃かもしれない、と乾きかけた涙の跡を拭い、髪を撫でる。
一部の頭髪は、付着物が乾いて塊になってしまっている。
シャワーを浴びせて、と言ったが、精々、水桶に体を浸からせた程度だったんだろう。
(もう一度、ちゃんとお風呂に入れてあげなきゃね)
水が平気な子だといいけれど、とまた溢れ出た涙を指先で拭った。
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