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意志あるところに道は開ける

第2章 2.



 ✜

青年の部屋を出ると、紫陽様、と執事長の葵がいた。

「市場より情報が届きました。
 やはり、『産地情報』は無く、浮浪者だったようです。
 当時の彼の所持品を入手しましたが、その...」
「?私の部屋に」

承知しました、と腰を曲げて廊下を行く葵。

部屋にあったのは、リュック一つだった。

中には、本が入っていた。
パラ、とめくってみるが、異国の言葉のようだった。
彼の筆跡か、ノートも何冊もあった。

(学者...?
 言語を調べていたのかしら)

リュックの前ポケットを開けた。

(元は、きれいな顔なのね)

胸上の彼の写真がついた掌サイズのなにか。

そのほかには、絆創膏と個包装の消毒綿が入ったクリアポーチ。
もう一つ、写真付きの小さな紙があった。

  見波医科大学 医学部医学科 忍足 侑士

「どこの地方の言語かしら...」

何を示す文字の羅列なのかわからない。

彼の名前なのか、所属なのか、これが示す何かしらの許可なのか。

  XX年10月15日

「誕生日、かしら」

月日は分かるが、その前の数字は年号だろうか。
ただ、その数字はあまりに先の数字で、未来に誕生日?と首を傾げた。

皮の手帳を開くと、書き込まれていたのは青の変わった形の文字らしきものと、緑で「15-20」「17-22」などの数字。

数字は分かったが、その他は読めないし、カレンダーも、自身が使うものに比べてなんだかおかしい。

「いったい、どこから来たのかしら...」

ふと時間を見ると、彼が寝付いてから3時間が経っていた。

薬の効きをみてみよう、と彼の寝室に向かう。

ノックに返事は無かった。

そっと開けると、安全灯がついているだけの部屋。
ベッドには、体を丸め、頬の下に重ねた両手を敷いて側臥位に眠る彼がいた。

もご、と動いた口。

「オトン、オカン...」

グズ、と鼻をすすった彼のまぶたの縁がキラッと光った。

すうすうと穏やかだった息が、ヒュッと鳴った。

「や、いや...いや、やぁ」

つ、と眉間を流れた涙。

「いやっやだぁ...ねえ、ちゃん」

そっと枕元に腰掛け、一応石鹸は使ったであろう髪を撫でた。

 ✜
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