第20章 20.
スッキリとしない天気の日だった。
鉛色の空が薄灰色の雲に隠された頃、「雨が降る」と菜園から急ぎ戻ってきた遊木は、午後に予定されていた菜園での収穫を見直そうと、診療所に来ていた。
「紫陽様は?」
「カズハはんいう人ん所に、薬、届けに行きはったで」
「なら薬草畑まで行ったのか...」
ゴロ、と外から腹の底から響くような音がした。
「来あがったなぁ」
窓から外を心配そうに見る遊木に、侑士も外を見た。
「紫陽様とカズハばあさん、大丈夫かなぁ?」
「雨が強ぅなるようなら、切り上げて帰ってきはるんちゃう?」
そうじゃねぇ、と遊木が首を横に振った。
「紫陽様は、雷が大の苦手なんだ」
「そうなん?」
知らんかった、と侑士は本から顔を上げた。
「まだ紫陽様がお小さい頃、先代先生と奥方様が御健在の頃の話さ。
木々が傷まないように、と先代の庭師、俺の親父がこんな感じの天気の中、庭木の保護に向かって、雷に打たれちまってな
先代先生と奥方様が処置に入ったんだが、高齢だったこともあってそのまま...
紫陽様は親父を『おはなせんせい』って呼んで懐いていらしていたから、ずいぶんショックを受けられてなぁ
まあ、そもそももう親父もいい年だったけどな」
「あ、やからドクターは、天気悪いとソワソワしてはるんか...」
そうなのか?と侑士を見た遊木。
「めっちゃ外、気にしはるよ。
いつもより気、張ってはるし、晴れたらめっちゃ安心した顔しはるから...」
「よく見てんだな」
「...ほどんどここで一緒におさしてもらっとるから」
再び本に目を落とした侑士。
重暗くなった窓が一瞬強く光り、少しして、食器棚が倒れたような轟音が鳴った。
「げぇっ!?」
「8秒。
音は秒速約340mやから...2,720m...約2.7km圏内やな。
光ったん、西の森側やったな...」
「おお、よくわかるな。
西の森なら向こうか...カズハばあさん家の方だな」
紫陽様、大丈夫か?と外を伺う遊木に、侑士はポツポツと水玉がつきだした窓を見た。
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