第20章 20.
お昼を食べて気分転換しましょう、と言った紫陽。
昼食後、いつもは午後の診察開始までデスクで本を読む侑士は、館のリビングのソファに寝そべっていた。
「「ゆーしくん、どうしたの?」」
重なる声に顔を向けると、手を繋ぐつきとほしが、顔を覗き込んでいた。
「疲れてん...」
「「お疲れ様ぁ」」
よしよし、と小さな2つの手に頭を撫でられる。
「「しんりょーじょ、おんなのこ、たくさんきてたね」」
「病気も怪我もしてへんモンがノコノコ来るとこちゃうねん...」
「「かんせんしょーよぼーだもんね!」」
子どもたちがむやみに診療所側へやって来ないよう、紫陽はしっかりと予防衛生指導をしていた。
「つき、ほし。なにをしているの?」
ソファの前に座り込んでいる二人に気づいた紫陽は、ソファのすぐ後ろまで来て、そこに侑士がいることに気づいた。
「ずいぶん、お疲れのようですね」
「しょう、せんせー」
ノロノロと伸びてきた侑士の手に、なにか?と歩み寄る。
「っきゃっ!」
ソファに座った侑士に手を引かれ、ぎゅっと腰に巻きつけられた腕に抱き寄せられた。
「ゆっ侑士先生っ!?
センセイッ!?」
無言で紫陽の腹部あたりに顔を埋める侑士。
「「ゆーしくん、泣いてるの?」」
侑士が体を起こした事で左右に開いたソファのスペースに座ったつきとほし。
「「よくがんばりましたー」」
よしよし、と左右からつきとほしの小さな手が侑士の肩を撫でる。
「せんせ、」
「え?」
微かに聞こえた声に、侑士の頭頂部を見下ろす。
小さな手に撫でられる髪がほつれてきている。
ぎゅ、と少し力を込められた腕に、恐る恐る手を伸ばす。
髪のほつれを解くように侑士の頭を撫でると、少し、背を伸ばすようにしてより抱きついてきた。
ゆっくりと目を閉じ、紫陽の鳩尾の少し下あたりに、ピタリと耳をつける。
「落ち着く...」
ゆっくりと呼吸をする。
「せんせぇ...」
眠れないときに甘えてくるつきやほしのようにくっついてくる侑士。
トクトクと自身で強く鼓動を感じるのは、子どもたちよりも力のある腕に抱き締められているせいだ、と言い聞かせ、子どもたちを宥める時に頭を撫でるように手を添えた背中は、とても、大きかった。
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