第20章 20.
「年、いくつ?」
「覚えていません」
「名前の由来は?」
「ドクターには、『侑』は人のためになる優しさ。『士』はつわもの、人のために戦う男、という意味だと教えてもらいました」
「誕生日は?」
「...さあ」
「趣味は?」
「ドクターから医学を学ぶことです」
「女の子のタイプは?」
「考えたことがありません」
「うちらのこと、どう思う?」
誰か患者が来れば診察を理由に追い返せるのに、今に限って誰も来ない。
そっと背後を振り返るが、紫陽は我関せず、と薬品棚の検品をしている。
再度見た、よく話す彼女は満面の笑み。
その後ろの彼女は、侑士と目が合うと、少し頬を染めた。
受付の中で読んでいた本を閉じ、溜息をつく。
す、と動かした手に、手前の彼女が、なになにっ?と目を煌めかせた。
「『よくしゃべるな』」
少し、視線と指先をずらす。
「『何しに来たんやろ?』」
「あ、あのっ」
指差した彼女に、一応、はい?と返事をする。
「今度っお茶にお誘いしてもっよろしいですかっ?」
「っ私もっ!
私、ジュリアっ」
「えっと、メグ、です」
閉じた本を手に立ち上がった侑士。
「お茶には行きません。
あなたたちは、俺に何をせぇと言うんですか?
診察ならいつでもどうぞ。内容によってはしょう...ドクターに話さはった方がええかと。
お茶...俺個人に用がある言うんなら、お断りします。話しかけんとってください」
昼を告げる鐘が鳴った。
「見たところお元気そうなんで、どうしても、どうしても診療が必要やと言わはるなら裏の緊急呼び出し用の鐘、鳴らさなってください。
あ、ただ、いたずらでやりはったら、先ひと月、何があってもここでの診察はせぇへんので、覚悟の上でどうぞ」
では、と、窓口に昼休憩を知らせる張り紙を張って、シャッとカーテンを閉めた。
受付の椅子に静かに座ると、じっ、とカーテンを引いた窓を見つめる侑士。
「なんか、思ってたより100倍冷たい...」
「怒らせちゃった、かな?」
「もういいよっ行こ!」
診療所の出入り口の明け閉めを知らせるベルが鳴ると、受付から待合を通り、その扉にピタリと耳をつける侑士。
脱いだ白衣を椅子にかけ、扉に向かう。
「お疲れさまでした」
「...せんせぇ」
泣きついてきた侑士の背を、そっと撫でた。
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