第19章 19.
朝食の片付けと昼食の仕込みを終え、そろそろ収穫期が終わるオレンジを遊木からもらった空木は、館の裏手にあたる調理場からの勝手口を出たところで、ポタジェから収穫してきた調剤用のアロエの皮むきをしている侑士を見つけた。
「侑士さん、お疲れさまです」
「空木はん!お疲れさんです」
子どもたちは、おはよう!こんにちは、と挨拶することが多いが、おとなたちはいつでも「お疲れさまです」とやりとりしていることに気づいてからは、侑士も、おとなに対しては「お疲れさまです」と言うようになった。
アロエですか、と桶いっぱいに剥かれた果肉に気付く。
「お上手ですね」
濃緑の皮だけが侑士の足元にあり、桶には一瞬、水が溜まっているのかと思うような透明の果肉。
「ドクターが、皮は薬にするんやと言うてました。
保湿剤とか日焼けの炎症鎮静剤になるて。
中んプルプルしたんは、空木はんとこ持っていくよう言われとるんですけど、なんに使わはるんですか?」
「食べるんですよ」
「食えるんっ!?」
驚く侑士に、もちろん、と空木が指さす。
「一口大に切ってそのまま刺身、下茹でしてヨーグルトに混ぜる、レモンとともにシロップ漬けにして保存食。
水分豊富ですから、体調不良で食欲が無い時の水分補給にもなります」
使い勝手いいんですよアロエ、と微笑む。
「今日のおやつに早速使いましょう。
シロップ漬けにするには時間が無いので...そうだ!」
ちょうどいい!と遊木にもらったオレンジを手に取る。
「半端に残っているヨーグルトがあるんです。
オレンジと混ぜて、フローズンヨーグルトにしましょう」
「フローズンヨーグルト?」
「ヨーグルト味のアイスですよ」
「オレンジ味のヨーグルトアイス...」
ごく、と侑士の喉が鳴った。
「アンリくんはヨーグルトアイスは食べられないと思うので、ゼリーにしましょう。
手伝ってくださるなら、侑士さんの分のゼリーも作りますよ」
内緒ですよ、と口元に人差し指を立てる空木と、内緒やな、と真似をした侑士は、いたずらを思いついた子どものように笑い合った。
✜