第19章 19.
紫陽からのお使いで市場の書店に行っていた侑士は、ゆーし先生!と呼び止める声に振り向いた。
「こんにちは」
「リナはん、こんにちは」
笑顔の彼女は、ほら、と背に向かって声をかける。
「ユウー?起きてる?
大好きな侑士先生だよ〜」
受け取った本を抱え、リナの背にいるユウに視線を移す。
侑士に気づくと、ご機嫌に笑ったユウに、ちょっとええ?と手を伸ばす。
「リナはん、ユウちゃんのこの発疹...」
「え?ああ、最近出てきたのよ。
乾燥かしらねぇ?」
ユウのふくよかな頬にポツ、とできている赤い発疹。
「ちと、見さしてもろてええ?」
「ええ、どうぞ」
店先を借り、リナが背から下ろしたユウを寝かせる。
「首にもできとる...」
むちむちとした首の皮膚を少しめくると、赤みと発疹。
手や足をみると、そちらにもポツポツと赤い点が出ていた。
(これって...)
リナはん、と顔を上げる。
「最初にブツブツが出てきたん、いつ頃かわからはる?」
「気づいたのは、その肩の大きなやつがあるなぁって2,3日前に...」
確かに肩に他より少し大きな発疹がある。
それに触れると、ユウは嫌そうに顔を顰めた。
「痛い?
堪忍なぁ」
よしよし、と滑らかな皮膚を撫で、めくった服を直す。
「水疱瘡かもしれへん。
なあ、リツも小こい頃、こんなんなったことある?」
「水疱瘡?あったかなぁ?」
「リナはんやセンリはんも、赤ん坊の頃なっとる?
なっとるなら、抗体言うんが身体ん中にあると思うんやけど、無いんやったら、うつってもうたら大変や」
「え、なんかヤバイやつ?」
「高熱が出て、身体におんなしように発疹が出る。
抗体ができとっても年取ったら減っていくから、もし、センリはんが罹らはったら『帯状疱疹』いうんになって、寝れんくらい、服の布ズレも痛いくらいひどなるケースもある」
「ヤバいじゃん」
えー、とユウを見たリナの顔に焦燥が浮かぶ。
「俺、今から帰るさかい、店閉めたら診療所来てや。
ドクターにもみてもろて、肌荒れなんか水疱瘡なんか診断してもろた方がええかも」
「いや、侑士先生が言うならそうじゃんっ!
今、できること、無いの?」
今できること...と考えた。
「まだ水疱瘡やと確定でけへんから...」
なんもない、と侑士は言った。