第18章 18.
「侑士は、すごいな
もう、自分の仕事を見つけてきて」
「ドクターと似たことしとるからそう思うだけやって」
侑士は、先ほどの子どものカルテを書くと、机を片付け、机上に1枚の板を置く。
「この辺り、病院も無いし、医者もドクターだけやろ。
外科、内科、小児科、救急。
全部してはったんやから、俺なんかまだたまごにもなれてへんよ」
板の上に白い粘土のようなものを置くと、それを差し出してきた。
「粘土?」
「そうやなぁ...あ、なんや、アンリが好きなもん、作てみてや」
「好きなものって...」
突然言われてもなぁ、と粘土の塊を見つめる。
「ほんま、なんでもええ。
形でも文字でも絵でも」
そう言うと、侑士は粘土を少しちぎり取り、手で捏ね始めた。
「今日おやつ、ポンデケージョ?言う、ジャガイモで作るパンみたいなやつやて空木はんが言ってはったから、あとで調理場、行こうや」
侑士が器用に綺麗なまん丸にした粘土に、真似るように板の上で粘土を捏ねる。
「侑士が空木さんを手伝うのってさ、つまみ食いするためって本当?」
「誰がそないなこと言うたん?」
「遊木さん。
畑仕事とか庭の手入れはイヤイヤみたいな顔でやるくせに、キッチンの事は楽しそうにしてるから、『あいつ絶対空木さんからなんか貰ってんぞ』って」
「遊木はんっ!?」
もう庭の手入れ手伝わへんぞっ!と侑士は、珍しく声を張り上げた。
「そんなんちゃうよ。
料理が楽しい言うだけや。
昔の遠い国にな、『医食同源』言う言葉があんねんて」
「いしょくどーげん?」
「『薬食同源』とも言うんやけど、食べるもんは薬と同じ。
つまり、食べもんでかかる病気も左右される。
食べもんに気ぃ使ぅたら、健康を維持できる、言う考え方があんねんて」
難しい言葉を知ってるなぁ、と侑士を見る。
「ちと、手ぇ見してくれる?」
「え?うん」
粘土で少し白く汚れた手を見る侑士。
「痒かったりせぇへん?」
「べつに?」
ふむ、と侑士は手を見て紙に何かを書いた。
「息苦しいとか、ゼーゼーもしてへんようやね?」
「しないよ?
診療所はいつも清潔だから...」
「あんな、騙したとかとちゃうんやけど、コレ、小麦で作ってん」
水と小麦粉を混ぜたもんや、と言われたそれで白くなった手を見た。
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