第18章 18.
✜
数日後。
侑士は夕食後の入浴から就寝までの自由時間に、誰もいない「べんきょう」の部屋に紫陽といた。
薬袋医師にもらった万年筆のインキを確認し、フー、と長く息を吐く。
「いい?」
「ええです」
目の前の一人掛け用の机に伏せ置かせた一枚の紙を見つめる。
「時間は45分。
合図で裏返して解答を始めて。
20分と30分経過時点で声をかけるわ」
「お願いします」
「用意ができたら、膝に手を置いて」
ゆっくりと深呼吸をし、よし、と背を伸ばして膝に手を置いた。
「始めっ」
紫陽の声で、バッ!と机上の紙を捲る。
Q1.次のうちから、哺乳類をすべて選べ
15ほどの生き物の名前から、該当するものに丸をつけていく。
Q2.ヒトの臓器の名称を答えよ
A〜Fが指す各臓器の名前を書き込む。
Q3.DNAとは何か。簡潔に説明せよ
少し考えて、「デオキシリボ核酸」。遺伝子情報を持つ物質で、髪の色や目の色を決定するタンパク質の合成情報、と記述をする。
Q4.倒れている人を発見した時の対処法を答えよ
自身の安全確保の後、呼びかけによる意識の確認、呼吸、心音、脈の確認、と紫陽に学んだ救急救命の手順を迷い無く書く。
Q5.アナフィラキシーとは何か。簡潔に説明し、その原因となるアレルゲンをあげよ。
食物や動物毒、薬物が身体に侵入した際にアレルギー反応を起こし、蕁麻疹や皮膚のかゆみ、呼吸困難などの生命に関わる重篤状態にもなりうるもの。
そこまで書いて、少し悩む。
(アレルゲン...)
小麦、乳、たまご...と書いた一行を二重線で消す。
ちら、と紫陽を見た。
目が合ったが、反応は無かった。
(食物、薬品...せや、ネコの毛とか動物もあるな)
記述の仕方に悩む。
(スギやヒノキの花粉もアレルギー反応や...
石けんがあかん言う人もおる...食べもん、口から入れるもん以外でも発疹が出たりする人もおる、て紫陽せんせーは言うてた...)
よし、と、意気込んで回答枠に書き込んだ。
✜
「30分経過」
紫陽の掛け声に、解答の見直しをする。
(どないしょう...)
Q5を書き直すか悩む。
うーん、と唸り、(せや、)と、再びペンをとる。
「そこまでっ!」
紫陽の声に、ペンを置いた。