第17章 17.
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「ん、」
ゆっくりと身体を起こし、見渡す部屋は、館の自身の部屋。
まだ、薄暗い部屋で、ぼんやりと蓄光石が光っていた。
「うー、んっ」
グッ、と身体を伸ばし、ベッドからおりてカーテンを開く。
窓の向こうの空は、遠くは青く明るかったが、まだこちら側は濃紺で一つ、星が残っている。
タオルと洗面具を手に共有の水場で歯磨きと洗顔を済ませると、着替えてキッチンへと向かった。
「おはようございます、空木はん」
「おはようございます」
お早いですねぇ、と微笑む空木がいる調理場には、すでに僅かにいい香りがしている。
「なんしたらええかな?」
袖を捲り、洗い場で手を洗いながら聞くと、魚をお願いできますか?とバットを作業台に置いた。
「下処理と味付けは済んでいます。
皮目から両面焼き。
こちら側が身が柔らかく食べやすいので、小さな子向け。
丸半身は紫陽様と侑士さんとおとな用で、あとは早いもの順です」
「皮から両面な。油は?」
「フライパンにグレープシードオイルでお願いします。
魚の身から脂が出るので、フライパンの表面に行き渡って、傾けても溜まらない程度でいいです」
「わこうた」
指定の通り、フライパンを選んで行き渡る程度のグレープシードオイルを引き、卵とパン粉がついた魚をそっといれると、パチパチと音がする。
「めっちゃええにおいする」
「やはり、肉や魚の焼ける匂いは、空腹を刺激しますね」
「空木はんの料理は、冷めてもうてもうまいからびっくりしたわ」
「弁当用には、やはり、時間が経っても、温めずにおいしく食べられることを想定してレシピを練ります。
物によっては、あったかいうちはそんなおいしさが実感できない味付けをするものもありますよ」
「そうなんっ!?
なんでもあったかいんがうまいと思うとった...」
「グラッセやマリネなんかがわかりやすいです。
油やバターを使うものは、特に温度で味の感じ方に差が出ますから、提供時の温度によって、敢えて薄め、濃いめに作ります」
当然のように言う空木の横顔に、そう言えば弁当もいつもと同じ味だった、と侑士は思い出した。
「料理って難しいんやなぁ」
「甘みを出すために、砂糖を使うのか、味醂を使うのか、はちみつを使うのか。食材と合うものを見つける」
それが楽しいんですよ、料理は。と空木は笑った。
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