第17章 17.
再び乗り込んだ車が館までの一本道に入ると、車窓から外を見ていた侑士の口角がわずかに上がった。
今日は天気がいいので、みんな、べんきょうやおしごとをしているだろう、と久しぶりの門戸を車で潜る。
懐かしくも感じる館の正面に広がる庭園の花が、変わっていた。
エンジンが停められた車からゆっくりと降りると、館を見上げる。
何も言わない侑士を、紫陽は何も言わずに少し先で待った。
ゆっくりと、胸を膨らませて吸った息を吐いた侑士と目が合う。
「まずは、自分の部屋に行って、掃除。
それが終わったら、葵さんや空木さん、遊木さんには、侑士が今日帰ることを伝えているから『帰りました』と一緒に伝えに行きましょう。
それが終わる頃にはもう昼食の時間だから、みんなが揃ったら、子どもたちにもあいさつをしてね」
部屋の場所は覚えている?と聞かれ、はい、と侑士は頷いた。
紫陽が少しずつ持ってきてくれた着替えや書物が詰まった鞄を手に、自分の部屋に向かう。
少し緊張しながら扉を開けると、シーツが引き上げられ、新品のシーツが置かれているベッド以外、変わりなかった。
ベッドにカバンを置き、荷物を机に運ぶと、机上に何かあった。
星の形の様な5弁の花弁は青紫色。
まだ十分にあおかった。
「なんの花やろ?」
名前がわからない花を出窓に置く。
そこには、小さな小石がひとつあった。
「なんやったっけ?これ...」
石?と指先でつまみ上げる。
窓から入ってきたとは考えにくい。
花と一緒に、誰かが置いていったのだろうか...と見つめていると、あ、と思い出す。
「蓄光石か...」
その石のいわれを思い出し、でもなして?と考える。
「もろたんやろか...?
え、でも...窓んとこに置いとったって事は、光集めようしたんよな...?
俺が蓄光石んこと知ったんは、こん前のアネモネ祭りん時やから、誰かに渡して返してもらうたんも無いな...もろたやつは返したし...」
小さな石は、きちんと洗って磨いたのだろう。
綺麗な白は、少しの透明感がある。
「俺が、誰かを想うて、拾った...?」
一人の部屋で、かあ、と顔が熱くなり、赤くなるのがわかる。
「どないしよ...」
誰かの想いを受け入れたのか、誰かへの恋慕を抱いていたのか。
それは、侑士の記憶に残っていなかった。