第17章 17.
山を降り、畑の道に入ると、落ち着かなくてそわそわし始めた。
「大丈夫?」
「なんや...緊張してきてしもうたっ」
「一度、止まりましょうか?」
山を降りきって、平坦になった道の端に車を止めた紫陽。
「出てきて、深呼吸したら?」
車の外で待つ紫陽に、恐る恐る車から出た。
見上げた空には、遠く、高くに鷹か鷲が舞っていた。
進行方向から荷車を引きながら歩いてきたのは、樵夫だった。
荷車いっぱいに木を乗せ、重たそうに引く壮年の男と後ろからふうふうと言いながら押す年増の女。
樵夫の合図で、道端に荷車を止めると、休憩をし始めた。
木が乗っているだけかと思っていた荷車から、ひょこ、と幼子が2人、顔を出した。
なんの木やろうか、と荷車を見ていた侑士と目が合うと、ニマーッと笑って手を振ってきた。
「あ、え...ん?」
困惑する侑士と、子どもに気付いた紫陽。
「ふふ。
かわいいわね」
ニコニコと見上げてくる二人に、そうだ、と車に積んだ荷物を漁り、小瓶に詰めた乾燥クコの実を取り出した侑士。
「おいしいで」
真っ赤な実が詰まった瓶にはしゃぐ子どもたちに、女が気づいた。
「こら、お返しなさい」
「いえ、よかったら受け取ってあげてください。
私は医者です。それは、乾かしたクコの実です。
毒は無いと誓います」
ね?と紫陽に微笑みかけられた侑士は、女を見て、こく、と頷いた。
「ご所望なら、毒見いたします」
「いや、そんな。
好意で頂いたものにケチをつけようなんか、思っちゃおりません。
しかし、いいのですかい?こんなにたくさん、大変だったでしょうに...」
紫陽に見られた侑士は、戸惑いながら頷いた。
「また、採り行くさかい」
「やさしい兄さんだ。
本当にどうもありがとう」
「いえ。あの、お気をつけて」
「ありがとうねぇ」
既に、頬いっぱいにクコを頬張って、荷台から手を振る子どもたちに手を振り返した侑士。
「なんや、つきとほしみたいやなぁ」
「本当ね。
でも、あげてしまってよかったの?
せっかくあんなにたくさん摘んだのに」
「ええの。
今度はみんなと行って、もっと採ってきて、ドライフルーツ、空木はんと作る」
それができる、と侑士は嬉しそうに笑った。