第17章 17.
「ドクダミは代謝を助ける効果があって、体内の毒素を出す効果がある。
カフェインは無いけれど、子宮収縮作用があるから、妊婦さんには気をつけるように言ってるわ」
「子宮...
女性の、腹部にある内臓ですね」
「そうよ」
だいたいこの辺り、と自身の下腹部に触れる紫陽に、侑士は自身の近い箇所に触れた。
「妊娠中、赤ちゃんが約10カ月を過ごす臓器だから、あまり縮んだりすると、胎児に影響が出るのよ」
「見えへんのにわかるんですか?」
「そうね。
それは、これまでの『先人の知恵』ね」
「『先人の知恵』?」
「これまでの進化の過程や経験のなかで学んだ知識、と言う意味」
桶に汲んできた水で葉をきれいに洗うと、ざるに広げる。
「こうして風通しのいい場所で乾かせば茶葉になるわ。
乾燥したものを煮出せば、どくだみ茶になる」
「お茶になるんや」
「ミントなんかのハーブと同じよ」
「なるほど」
小屋の外の雨よけがある場所に、葉を並べたざるを置く。
「葉が割れるくらいに乾燥させたら出来上がり」
「どんくらいですか?」
「一週間くらいかしらね」
「一週間...」
薬袋医師にもらった万年筆を挟んだノートを広げる。
「昨日が左半分の月やったから...
ちょうど次の新月あたりやな...」
侑士が手に持つノートを覗き込むと、日付の端に丸印があり、日によって黒く塗られていたり白い円だったりした。
「これは?」
「月の形です」
「どうして、一週間後が新月とわかるの?」
え?と侑士は不思議そうに目を瞬かせた。
「時間は、ここから見てお日様がどこにあるかでわかる。
日にちは、月を何度見たかで数がわかるやないですか」
「そうね。
でも、次がいつ新月かなんてわからないし、月が出ない日もあるわ。
何度寝て、何度起きたかで日にちの経過はわかるでしょう?」
「それやったら、体悪して寝込んだらもうわからんよぉなります。
月は約15日かけて満ちて、約15日かけて欠けるんやから、月の形見たほうが確実ですやん」
「あなたの言うことはもっとだけれど、こんな短期間で、月の満ち欠けが15日の周期だと気付けるはずないわ。
きっと、もとから知っていたのね」
ここに来て、必要と判断された元の侑士が得ていた知識が蘇ったのだろう、と紫陽は考えた。
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