第17章 17.
雨上がりの草木には、水滴がついていたり、葉にまだ露が残っていて、森や山全体がキラキラとして見えた。
緑の葉が茂る間に、小さな粒々とした直径2cm程の深紅の実が集まった木の実をもぎ取る。
完熟していそうな実を指で潰し、手についた果汁を舌先で舐めてみる。
「甘いな」
痺れる感覚は無い。
食べられるものかもしれへん、と、いくつか収穫する。
鮮やかなオレンジのびわや、赤紫に熟れたいちじく、小さな赤い実に黄色の小さな斑点があるグミもあった。
手頃なサイズのアケビもあったが、まだ皮が割れておらず、握ってみると随分硬かったので、あと1週間ほど待ってみよう、と自生している場所を覚えた。
日が差しづらく、湿った場所の倒木には幾つかのキノコがあったが、紫陽と空木に「キノコには触るな」と言われていたため、目視で確認だけした。
静寂の中を踊るように駆け抜けた風に、微かな馬の声を聞き、シルキッサや、と顔を上げる。
目を閉じ、深呼吸して気を澄ませると、耳に届いたのは蹄と微かな声。
「っせんせーや!」
果実が詰まった籠を掴み、道無き茂みの草木を弾きながら駆けると、砂利と土の道に出た。
雨上がりでまだわずかに泥濘んでいる道に、紫陽の車の轍とシルキッサが駆けた跡があり、小屋へと駆け戻る。
小屋までの緩やかな下り坂を駆け抜けると、扉の前に立つシルキッサが見えた。
「シルキッサ!」
息を上げて来た侑士に気づくと、トコトコと近寄ってきた。
「おはようさん」
寄せてきた顔を撫でると、紫陽の車の扉が開いた。
「おはよう、侑士」
「おはようございます、Dr.紫陽」
シルキッサを撫でる侑士の腕に掛けられた籐編みの籠に詰まった果物に、まあ、と紫陽が驚いた。
「全部、あなたが見つけたの?」
「どういうところに生えとるんかわかれば、すぐ見つかりますよ
日中に日が差しとって、蔦が絡みやすそうな丈夫な木の周辺を探したら大概なんかあります」
「すごいわ」
曖昧に笑った侑士は、そうや、と誤魔化すように言った。
「これ、ドクダミやと思うんですけど...
自信無くて」
見てほしい、と出されたハート型の濃い緑の葉は、独特の香りを放っている。
「そうね、ドクダミだわ」
きれいな葉ね、と籠に詰められた薬草や果物に頷いた。
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