第16章 16.
小屋の近くにはこの山の主流の川があり、周囲ではたくさんの動物たちが生活していた。
シルキッサもそのひとりで、侑士が気に入ったリスやウサギ、多くの鳥の巣もあり、ヒトではない生き物がたくさんいる小屋は、今の侑士にとって最適で過ごしやすい場所だった。
「あ、」
窓のリスを見ていた侑士は、何かに気づいて立ち上がると、バスケットから丸のままのリンゴを取り出した。
2枚の皿に挟んで、上から手で体重をかけて潰すと、砕けたリンゴが乗る皿を手に外に出た。
扉の前には、タヌキの親子が見上げていた。
「これが気に入ったんやろ?」
ほら、と皿を置くと、はくはくと食べだした。
自傷に繋がるため、切れる刃物や刺せる先の鋭いものは何一つとしてこの小屋には置いていない。
「ずいぶん友達が増えたわね」
「シルキッサが連れてきてくれたんです。
みんな、俺ん事怖がらんと構てくれます」
取り分を失った子タヌキが、鼻を鳴らして侑士を見上げた。
「また取られてしもたん?」
いっつもそうやなぁ、とスティック状に切られたニンジンを数本、与えてやった。
「この子、いつも自分の分を取りきらんのです」
「そうなの?」
隣にしゃがんだ紫陽に、ほら、と言う。
「他んとに比べて、小ちゃいでしょ?」
「確かに、少し痩せてるわね」
「甘えてばっかおったら、生きられへんで」
ほら、と子タヌキの後ろにニンジンの欠片を投げた。
「自分で探さんと、生きられへんよ」
転がったニンジンをちら、と振り返るだけで、子タヌキは臆すこと無く、侑士の足元に近寄って、その手に鼻を近づけた。
「甘ったれが」
片手に隠していた残りの欠片をやり、まあ、と慣れた手つきでその尻尾を撫でる。
「似たもん同士なんかなぁ、俺ら」
与えられへんと生きられへんね、と子タヌキが満足するまで、野菜を与えてやる侑士。
侑士が投げたニンジンをめぐって、後ろで小競り合いをしているきょうだいたちには見向きもしない姿に、しゃあない子、と呆れたように笑った瞳は、ずいぶんと以前のように澄んだ様子に見えた。
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