第16章 16.
おやすみなさーい、とそれぞれの部屋に向かう子どもたちを見送り、キッチンへ向かう。
「できてますよ」
「ありがとう、空木さん」
大きめのバスケットからは、焼きたてのパンのいい匂いがする。
「どうですか?侑士さんは」
「だいぶ落ち着いてきてはいます。
一昨日から激しい禁断症状も出なくなってきてるし...」
「いつ頃こちらに?」
静かに首を横に振る紫陽に、そうですか、と陰りを見せる空木。
「子どもたちがいるし、万全な状態で戻したいの」
「わかっています。
けど、顔を見れないとさみしいですね」
「みんなのことは覚えてるわ」
「食事、完食してくださっていたのに、昨日も残されていました」
「まだ、動くほど体力が戻っていないせいかも。
すぐにまた食べられるようになるわ」
侑士の体内に残留していた薬物を抜き、中毒症状が落ち着くと、使用量が少量だったことが幸いし、禁断症状が強く出ることは無かった。
が、その事をしっかりと記憶している侑士は、自身の行いに苛まれ、幾度か自傷を起こした。
「少しずつ、シルキッサや動物たちなら怯えずに観察したり、触れ合ったりできてる。
振り出し、ではないけれど、また戻れるわ」
「また、侑士さんと料理がしたいです」
「必ずできる。させる」
空木が用意したバスケットと、畑で採れた果物や木の実を詰めた瓶を乗せた車で森へと向かう。
小屋よりも手前で車を止め、バスケットと瓶を手に小屋へと向かうと、煙突から煙が上がっていた。
ドアノッカーを鳴らすと、少しして、鍵を開ける音がした。
「こんばんは侑士」
「...こんばんは、紫陽さん」
どうぞ、と言って中に入った侑士に続いて部屋に入ると、珍しく東向きの窓が開いていた。
「気分は?どう?」
「大丈夫です」
少し笑って、受け取ったバスケットの中を確認すると、瓶詰めの木の実を取り出した。
そこから、くるみとアーモンドを選ぶと、手で細かく潰して出窓の枠に置いた。
「何をしているの?」
「リスが来るんです」
「リス?」
窓を閉め、少し離れた椅子に座ると、窓から外を見る侑士。
窓の中に、2匹の小さな影。
「親子、なんかな?
こん前、窓開けたままにしとったら、テーブルのバスケットからナッツを口いっぱいに詰めて行きよったんです」
かわええ、と侑士が笑った。