第16章 16.
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もう4時間にもなる。
夕飯の時間になっても姿を見せない侑士に、部屋を訪れたが蛻の殻だった。
「見当たらないです」
どこ行ったんでしょう?と一緒に探していた空木が空を見上げる。
「もう日が落ちます」
「わかってる」
「町の方へは、行ってないですかね?」
「わからないわ」
畑と果樹園を見に行っていた遊木が、いねぇな、と不安げに言う。
「一丁前に家出かぁ?」
最初に「侑士がいない」と言ったのは空木だった。
いつも夕飯作りの手伝いに来る侑士が来ないので、探しても探しても見つからなかった。
「空木さん、大変だとは思うけど、子どもたちの夕食をお願い」
「元は一人でやってたので」
「遊木さん、もう少し範囲を広げて、周囲を探してくれる?」
「わかった」
「葵さん、市場を見てきてくれる?
本屋と、薬屋と...文具屋っ中心にっ」
「承知いたしました」
「どこに行ったのよ、あの子...」
部屋に駆け戻り、車のキーを掴む。
車に乗り込もうとしたが、もしかして、と森へと踵を返す。
ランプを手に、シルキッサが主に寝床にする場所まで来ると、シルキッサ!と呼びかけた。
ガサッという葉掠れの音に振り返ると、叢から蹄を鳴らして飛び出してきた。
「シルキッサ、侑士が帰ってこないのよ。
あなたに会いに来てない?」
見つめる大きな目に、そう、と俯く。
心配そうにするシルキッサを連れて館に戻ると、厩舎から鞍を持ち出して跨った。
「お願いね、シルキッサ」
空を見上げると、ゆっくりとシルキッサは歩き出した。
館からの一本道を抜け、町に入る。
既にほとんどの店は「Closed」の札を掲げ、真っ暗だ。
少し先に、赤や橙の灯籠やランプが目立ちだした。
「まさか...」
あの子に限って、とシルキッサから降りた紫陽。
通りの奥を見つめるシルキッサ。
「シルキッサ、本当にこの先に侑士がいるの...?」
まっすぐに通りの先を見るシルキッサは、ひくひく、と鼻を動かした。
頭を下げて地面をフンフンと嗅ぐと、キョロキョロと辺りを見渡す。
どうやら、侑士の匂いがここで途切れているようだ。
「ありがとう、シルキッサ」
シルキッサを見送る。
「なんで、こんな所に...」
そこは、少し行けば『氷の場』と呼ばれる、言わばスラム街の入り口だった。
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