第15章 15.
「『男のくせに』てなんやねん」
そうでしょう、とひのはの母は背を伸ばした。
「どこの誰かも分からないのに、さも人助けというように、女の聖域である出産に踏み込んできてっ
その上、子を産んだこともないくせに、医者だと偉そうに指示する女を師に仰いだ知識をひけらかしてっ」
「っ!」
カシャンッ、と床に医療用の金属トレーが落ち、医療具が散らばった。
「出てけっ!」
「ヒッ!」
「スウィーティー、」
「お前もやっ!」
ピッ、と侑士にメス先を向けられたひのはを、母親が抱き込んだ。
「人の命に、女も男も、老いも赤ん坊もあるかっ!
俺は、先生に、紫陽せんせーに助けてもろたっ医学でっ!
そんな俺が、今度は自分が医学で人救えたらええなって思うたらあかんかっ!?
誰が誰を助けてもええやろっ!
助けられたことに、感謝してもええやろっ
助けられたことを、喜んでもええやろっ
あん時、紫陽せんせーが帰ってこぉへんかったら、リナはんやってユウちゃんやって死んでもおかしなかったんやでっ!?
俺だけおったって、誰もっなんも助けられへんやったやろっ
あん時、リナはんもユウちゃんも助けたせんせーがかっこよかったて、好きやて言ったらあかんかっ!?憧れたらあかんかっ!?」
「や、やめてっ」
ひのはを抱いて怯える彼女を睨む。
「生きるも死ぬも紙一重や。
人を生かせる言うことは、殺すことも同じやで」
左手を薬棚にかけた侑士に、ひいっ!とひのはの母は顔を背けた。
「その通りね」
薬品棚の取っ手にかけていた手を握られた侑士は、ハッ、と振り返った。
「侑士、それは、正しい使い方?」
紫陽が指差したのは、右手に持った小型メス。
「あ、」
そっとトレイにそれを置いた侑士に、そう、と紫陽は頷いて、彼を庇うように、ひのはとひのはの母に向き合った。
「年頃の女の子が、同世代の男の子に魅力を感じるのは、自然ではありませんか?」
違いますか?と問われたひのはの母は黙り込んだ。
「大事な一人娘さんですから、気持ちはわかります」
私も娘ですから、と紫陽。
「だからといって、私たちの大切な『家族』を傷つけられては、こちらとて黙ってはいられません」
怯み一つなく立つ紫陽に、ひのはの母は黙り込んだ。
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