第15章 15.
「スウィーティー♪」
「また来たん...?」
診療所でカルテや医療器具の片付けを終わらせた侑士は、げんなりとした声を出した。
「毎日来るやん」
「当然ですわっ。
もう、1日でもスウィーティーの顔が見えないと、悲しくてっ寂しくてっ」
「...さよか」
わからんわぁ、とガーゼを紫陽に指定されたサイズに切る。
「なぁ、『悲しい』と『寂しい』って何が違うんや?」
「え?そう、ですわね...」
突然の質問に、ええっと、と考えるひのは。
「『悲しい』とか『寂しい』って感情やろ?
違いもわからんのに、これは『悲しい』、これは『寂しい』って使い分けられるもんなん?」
「ええっと、それは...」
「『嬉しい』と『楽しい』も、似てるけどちょっとちゃうんよなぁ...
けど、何が?言われると分からへんねんなぁ」
できた、と統一サイズに切ったガーゼを保管箱にしまう侑士。
「スウィーティーは、不思議な疑問を持たれるのね」
「?俺、変か?」
「いいえ。
そんなスウィーティーが素敵ですわ」
「すてき...」
せんせーもたまに使うなぁ、とアルコールランプの残油調べに取り掛かる。
「ひのはっ!」
突然の声に、なんや?と開かれたままの診療所の扉を見た侑士とそれにつられたひのは。
そこに立っていたのは、紫陽よりも年上で、前に会った産婆よりも若い女。
「母様っ!」
「『かあさま』...?」
母親言うことか?と、そう言って侑士の前に立ったひのはと彼女を見比べる。
ずんずんと診察室に入ると、ひのはを挟んで侑士を睨み上げてきた。
「うちの娘を誑かさないでっ」
「たぶ...え?」
「男のくせに、女を師と仰ぐなんて嘆かわしいっ
それも、そんな若年で出産に立ち会うなんて、穢らわしいことこの上ない!
『医学を学びたい』などと名目立てて、町外れの得体も知れないこんなところで、何を学んでいるんだかっ」
「母様っ
そんな、彼に失礼だわっ」
「あなたもです、ひのはっ!」
鋭く睨まれたひのはは、ビクッ、と固まる。
「嫁入り前の娘がこんな得体の知れないことろに、得体の知れない若者を目的に通うなんて、育ちを疑われますよっ」
「そんなっ」
ガシャンッ
鳴り響いた金属音に、ビクッ、と振り返ったひのは。
「スウィーティー?」
鋭い侑士の眼光に固まった。