第2章 2.
口の中に入ったトロトロのベージュは、甘かった。
少ししょっぱくも感じた。
苦くも、臭くも無かった。
ゴクリと飲み込めば、消えたのかと思うほどに、食道を傷つけることも嫌な匂いを残しながら戻ってくることも無かった。
不思議な食べ物だ、と彼女が手を添える皿を見つめる。
再び、皿から一匙すくうと、吐息で冷まして2口目を差し出された。
毒見ではなかったのか?と彼女を見る。
「ごめんなさい。
早かったわね」
食べられるようなら、口を開けて、と少し下げられた匙。
「あの、」
恐る恐る、彼女を伺う。
「ご主人様は、食べ、ない、ですか...?」
「これは、あなたのために作ったスープよ。
もっと食べ応えのあるものが食べたいでしょうけど、そんな身体に突然肉や脂を入れたら、胃が驚いて身体が拒否反応を示すわ」
受け入れてくれたようで良かった、とまた一匙掬って差し出されたスープとやらに食らいつく。
「まずは、薄味の野菜のポタージュと果物。
それに慣れたら、細かく切った野菜に少しお肉を入れたブイヨンのスープ。
それからリゾットかミルクに浸したパン粥、白身魚のすり身のタンパク質。
油を少しずつ取り入れて、胃が丈夫になったら、最初は鶏肉ね」
言われた言葉の半分も意味が分からなかったが、とりあえず頷いた。
「いろいろ挑戦してみて。
受け入れないものは、食べられないと言っていいから。
野菜、果物、穀物、肉、魚、海藻、貝、油。
贅沢はできないけれど、ある程度の食糧は確保できるようにしている。
食べられるのかわからないのなら、聞きなさい」
はい、とまた差し出されたスープはやっぱりおいしい。
「『おいしい』...?」
「?おいしい?このスープ、気に入ったの?」
(『気に入った』?)
確かに今、自分のなかに、「おいしい」という感情があった。
「また、食べたいと思う?」
どう?と微笑む。
(また、食べてもいい...?)
欲しいと言えば、くれるのだろうか?
疑問を抱きつつ彼女を見ると、微笑んで頷いた。
「また...食べたい、です」
「おいしかったのね」
よかった、とまた一匙差し出されたスープは、一口目よりももっと美味しく感じた。
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