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【呪術廻戦】誰も知らない

第27章 【脹相】へる日々


屋上へと続く階段を上る。
一段一段上るごとに上り始めた時にあった勢いはどんどん失われていった。
始めは八重への心配が先走っていたが、屋上が近づくに連れて別の可能性も頭の中で浮かび始める。
それはもう既に五条に会えて、渡せているという可能性。
もう渡して屋上には誰もいないかもしれない。
現在進行系で五条と二人でいるかもしれない。
どちらであっても一人で待ちぼうけるよりはいい。
〝繋がり〟を感じない以上、それを確認するのは目視より他にない。
もう既に階段は上りきっている。
あとは目の前のドアを開けるだけだ。

(一目見るだけでいい)

ドアを少しだけ開けて確認するだけでいい。
もう誰もいなければそれでいい。
まだ二人ともいれば去ればいい。
八重だけ佇んでいたら……その時はどうするかはその時考えればいい。
そう決してドアノブを握り、少しだけ開ける。
ドアから少し離れたところにあるベンチに誰かいる。
二人分の話し声が聞こえる。

(あぁ、渡せたのだな)

そう一瞬で安堵する。
そして人のいるベンチに視線をやる。
今日は月のない夜なのに今いる屋内が暗いためか外のそちらがよく見えた。
ベンチの二人を見た瞬間、脹相は頭をガツンと殴られたような衝撃が走った。
ベンチでは……

(八重が五条を抱きしめている…!)

八重が五条の後ろから手を回し抱きついている。
ちょうど五条がいつも八重にやるバックハグのように。
そのまま二人で談笑している。
先程の衝撃で頭の中は真っ白で何も考えられないのに今度は臓腑を鷲掴みにされたような感覚も覚える。
未だ止まった思考回路で身体はドアをそっと閉め、フラフラと階段を下った。
階段を下りきった時に初めてようやく思考の回路が繋がった。

(なんだ、これは?)

今、自分に走っている衝撃が何なのか理解できない。
自分は何に戸惑い、何に狼狽えているのか。
この身体への違和感は何なのか。

(これは何なんだ…?わからん…)

混乱がさらなる混乱を生み、何も考えることができない。
それなのに身体には帰巣本能なのか脹相はそのまま自室へ戻り、ベッドの上で布団をかぶって膝を抱えた。
頭の中では先程見た光景が焼き付いて離れない。
その度に腹の中のムカつきや胸の中のざわめきに苛まれる。
しかし、感情の答えはついに出なかった。
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