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【呪術廻戦】誰も知らない

第27章 【脹相】へる日々


次の日から脹相は朝食を食べてから鍛錬が始まる前までの時間でメレンゲを作りに厨房へ通い、夕食が終わってからその日の試作ケーキを八重と一緒に食べるというのが日課になった。
八重は毎日自分の作ったケーキを食べながら、やれスポンジの膨らみがどうのだの、やれキメが荒いだのと難しい顔をしていた。
脹相からしてみればどれも普通に美味しい。
むしろ、甘さ控えめになった分食べやすく、五条じゃなくとも1ホール食べ切れるとさえ思う。
そんなケーキの出来では満足できない八重のために脹相は毎日メレンゲを作った。
そうして、ようやく八重の納得するケーキが出来上がったのは五条の誕生日前日だった。
試作ケーキを一口食べて

「これなら五条さんに差し上げても大丈夫そうです!」

八重は少し興奮気味にそう声を上げた。
脹相も食べたが正直、昨日食べたものとの違いがわからない。
しかし、八重の中では努力が実を結んだ瞬間なのだろう。
だから素直に

「そうか。よかったな」

と八重を労うことができた。

「脹相、本当にありがとうございます。ここまでこれたのも全て脹相のおかげです」

全ては言い過ぎだろうとも思ったが八重がそう思ってくれるならそういうことにしようと思った。
それでも、目の前で嬉しそうにケーキを頬張る八重を見ているとどうにも気持ちが収まらない。

「本当に、よく頑張ったな」

気づいたら八重の頭に手を伸ばしていた。
八重の頭に手が触れて初めて、この手で何をするのだと脹相本人が戸惑ったがもう既に手を引くわけにもいかず、そのまま頭を数回ポンポンと優しくたたいた。
八重は一瞬驚いたように目を見開いたが、それでも次の瞬間には柔らかく微笑んだ。

「ありがとう、脹相」

はにかむ八重はいつもより随分幼く見えて、不老不死の止まった時間を差し引いた年相応の女の子にしか見えなかった。

ずっとこんな顔をしていればいい。
そのためならいくらだって頭を撫でてやるから。

そんな想いが頭を過ったが、過った瞬間手を離した。
八重は虎杖の隣にと願っているはずの脹相がそんな考えを持つなど自身では到底理解しがたかった。
そして今日もケーキを頬張る。
最後の試作ケーキはほぼ脹相が食べた。
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