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【呪術廻戦】誰も知らない

第27章 【脹相】へる日々


それからしばらくは五条が八重に絡むのを脹相は時に横目で見、時に殺気を迸らせ、時に百歛を構え、虎杖がそれを窘め、五条の八重への行き過ぎた接触を諌め、五条はのらりくらりとそれらを交わす。
八重だけが何の事情も知らず、ただいつも通りの家事をこなすのだった。

そんなある日のことだった。
家事と家事との隙間時間。
いつもであれば脹相や虎杖の鍛錬を見に来たり、そうでなければ図書室で本を読んでている時間。
八重は厨房から出てこなかった。
そんな日が数日も続けば何かあったのかと脹相がソワソワしだすのは当たり前の話で、呆れた虎杖に「気になるなら見に行きゃいいじゃん」と背中を押されて今厨房の入り口に立っていた。
そっと中を覗けば左腕に銀色のボウルを抱えるように持って、右手の泡だて器を一心不乱に動かし続ける八重がいた。
しばらく動かしては手を休め、また動かし始める。
夢中になっているのか脹相が入り口から身を乗り出して厨房に入っても気づかなかった。
それは近くに行っても同じで、“繫がり”でお互いの気配がわかる八重にしては珍しいことだった。
それだけ集中しているか、考え事をしているかなのだろう。
ボウルの中を見れば白い液状のものが入っている。
泡だて器の動きが止まるインターバルのタイミングで脹相は「八重」と声をかけた。
声こそ上げなかったが八重の肩がビクリと動いたところから脹相が背後に立っていることを本当に気づいていなかったようだ。

「脹相、どうしましたか?飲み物が足りませんでしたか?」

ビクついたことには触れもせず、八重が柔らかく微笑む。
八重の中では脹相が鍛錬の合間に茶でも取りに来たのだろうと思ったようだ。

「いや、大丈夫だ」

それだけ言ってなおも脹相はボウルの中身に視線を注ぐ。
これは一体何なのか、数日かけてずっと何を作っているのか、心の中でボウルの中身に問いかけても返事があるわけでもなく結局は「何を作っているんだ?」と尋ねた。
八重は「あぁ」と呟いて脹相の視線の先の白い液状のものを見た後に、脹相を見上げて照れくさそうに肩をすくめた。
そんな八重を見るのは初めてだった。

「今度、五条さんの誕生日があるとのことなので“けーき”をお渡ししようと思いまして」
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