第27章 【脹相】へる日々
次の日、八重は何事もなかったかのように朝からいつも通り働いていた。
食堂に行けばいつも通り八重が作る料理の匂いに満たされていて、いつも通り八重が食事を整えていて、そして。
「昨日はご心配いただき、ありがとうございました。とても、嬉しかったです」
いつも以上の笑顔を向けてくれた。
“繋がり”で喜んでいたのは知っていたが、改めて「嬉しかった」と言われると少しむず痒くなって悪い気がしない。
(やはり言葉で伝えられるのは違うのだな…)
それが如何に難しいことかは脹相自身が身を持って知っている。
だからこそ、このように素直に感情を言葉にできる八重は心から感心できる。
ただ八重の言葉に虎杖も脹相も安心したように朝食の席に着いたというのに、五条だけはどこか納得いかないといった風で脹相たちが離れた後でも八重に何か物申しているようだったし、朝食を食べている間も虎杖のおかずやデザートを何個も取り上げて多少の鬱憤を晴らしているようだった。
終いには食べ終わった後に再び八重の後ろから忍び寄ると耳元に口を寄せながら話しかけている。
(近い…!)
その距離は今まで五条が八重にとっていた距離とは明らかに変わっている。
思わず眉に力が籠もる脹相に気付いた虎杖が視線の先を追い、慌て始める。
「あ、なんか五条先生、今日はいつも以上に距離近いな…脹相、いつものあれだから気にせんで…」
しかし八重を囲うような距離。
八重が逃げられないことをいいことに五条は首元に猫がじゃれるように擦り寄り始めたのを見て脹相は勢いよく立ち上がった。
「っ待って!脹相!」
「五条は八重の仕事の邪魔をしている…」
「わかった!わかったから!俺!俺行くから!」
ゆらりと二人のもとに向かおうとする脹相のただならぬ殺気に虎杖は必死に止め、自らが急いで二人のものに向かう。
何やら今日のおやつの話をしているらしい。
「五条先生、俺のプリンあげるから八重さんのこと解放してやってよ。それに、ほら、さ」
虎杖は気まずそうに視線を後ろの方に流す。
そこにはもちろん鬼の形相の脹相がいるのだがそんなもので五条が怯むわけもなく、ひいては鼻で笑い、「羨ましいならお前もやってみろよ」なんて言う始末。