第27章 【脹相】へる日々
厨房に着くと何を作ろうかと二人で思案する。
「身体があったまるものとか何がいいんかなー?とりあえず、材料何があるか見てみるかー」
虎杖は冷蔵庫や棚などを物色しだしたのに対し、脹相は辺りをゆっくり見渡しているだけだった。
「脹相、どったん?」
「…いや、ここは八重がいないと随分雰囲気が違うな」
何ともなくそう言う脹相を虎杖は驚いたように目を見開いて数秒見つめると、肩を落としながら大きな溜息をついた。
「あのさー、脹相。お前さ……いや、いいや」
「ん?何だ悠仁、言いたいことがあるなら言ってくれ」
「いや、なんか俺が口出すことでもねーから。てかさ、脹相って料理できんの?」
話題を変えるために訊いた質問に脹相は顎に手を当て視線を斜め上に上げた。
「……」
「料理作ったことあんの?」
「…ないな」
「だよな!だって文字も今日初めて書いたんだもんな!」
少しやけくそ気味に声を上げながらなおも物色する虎杖は食器類が入っている棚からスープジャーを見つけた。
「あ、スープとかなら簡単にできんじゃない?」
「悠仁は作ったことがあるのか?」
「まぁ、じいちゃんと二人暮らしだったし、スープくらいなら作れっかなー」
スープに入れる材料は何があるか再び冷蔵庫を空けながら何気なく言う虎杖の言葉に「悠仁…お前は苦労してきたんだな…」と脹相が目頭を押さえる。
途端に虎杖はうんざりするような顔をした。
「苦労とか別にしてねーし。つーか、泣いてないで手ぇ動かせよ…鍋出すとかさー」
「わかった…」
脹相は未だに片手で目を押さえながら、もう片方の手で器用に鍋を取り出した。
「てか、鍋ある場所とか知ってんだ?」
「八重が出したりしまったりしているところを見ていたからな」
「いやもうお前、何なんだよ?」
「俺は…お兄ちゃんだ」
「そういうこと訊いてねーから!」
料理を作る前からどこかグッタリしだした虎杖とそれを不思議そうに見る脹相のもとに「コンコンコン」とノックの音が聞こえた。
音のした方を見れば厨房の入り口に真希がもたれかかるように立っていた。
「コントの最中悪いんだが、悠仁、ちょっとツラ貸せ。今後のミーティングだ」
「コントじゃねーよ、真希先輩。こいつがずっとボケてるだけ」
「俺はまだ呆けてなどいない」
「もういいって!」